2 環境保全コストの定義

 このガイドラインの「環境保全コスト」とは、以下で定義したような環境保全のための投資額と当期費用を言います。具体的には、事業者等の事業活動に起因する環境への負荷を低減させること等を目的としたコスト及びこれに結びついたコストです。

 財務会計では、今期に支出した投資額は、その効果の及ぶ将来の数期にわたり、各期の費用として分割して計上されます。一方、当期に支出がなくても、当期の収益に対応させるべき費用(引当金計上額等)は、当期費用として計上されます。ここでは、この投資額と、当期費用の両方を対象とします。

 その際、第三者が負担するいわゆる社会的費用*の増減は、当面含めないこととし、この点については今後の検討課題とさせていただきました。

  1. 集計の範囲
  2. 対象期間
  3. 投資額
  4. 社会的費用 


集計の範囲

 環境保全コストを集計するときの範囲については、連結決算の対象である全社及び全グループにおいて集計することが望まれますが、まずは、集計がしやすい工場、事業所等のサイト単位、もっと小さな区分からでもかまわないでしょう。

 また、連結決算の対象範囲と環境報告書で対象とする範囲は、必ずしも一致しない場合があり得ます。これは連結財務諸表の連結の範囲は、実務的には一定の基準が適用されており、実質支配力基準と環境的な重要性が同じであるとは限らないと考えられるためで、環境報告書の対象範囲を連結財務諸表に一致させることが妥当ではない場合も想定されます。従って、連結決算の範囲に十分配慮しつつ、環境的な重要性を考慮して環境保全コストを集計することが必要であると言えます。

 なお、いずれの場合においても、その対象範囲を明記し、かつ連結財務諸表の連結の範囲との相違も明記することが必要です。

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対象期間

 公表する環境保全コストの対象期間は、年次環境報告書の対象期間と合わせることが望ましいと考えられますが、会計年度がこれと異なる場合は、直近の会計年度の環境保全コストとしてもよいでしょう。

 

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投資額

 投資額は、設備投資額と研究・開発投資額に区分されます。そのうち、環境負荷低減のための投資額(環境投資額)については、その期の環境以外の設備投資額と研究・開発投資額を含めた各期の投資額の総額を別途記載することを原則とします。

 なお、過去の環境投資額を公表する場合は、各期毎にそれぞれの環境投資額を公表すべきで、累計額のみの公表は好ましくないと言えます。

 

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社会的費用*

 企業によって負担されるコストに対して、企業以外、すなわち外部不経済として社会が負担しているコストであり、例えば、企業の経済活動の結果、排出される環境汚染物質によって引き起こされる第3者の健康被害、農産物や漁業への被害等があげられます。

平成12年度(西暦2000年度)~平成26年度(西暦2014年度)の15年間を対象とすますが、今後の環境をめぐる情勢の変化により、柔軟に対応することとします。

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