1.環境保全コストの把握・公表の意義と効果


 持続可能な環境保全型社会を構築していくためには、市民、事業者、行政の各主体が環境保全への自主的・積極的取組を行っていくことが求められていますが、中でも事業者は、経済活動に占める地位が極めて大きく、積極的な取組を行っていくことが期待されています。

 

環境保全コストの把握(測定)が、健全な事業経営にとって必要不可欠の要素と考えられます。

 事業者が環境保全への取組を行っていくに当たっては、自らの環境保全に関する投資額やその期の費用-いわゆる環境保全コスト-を正確に把握(測定)して集計・分析を行い、その投資効果や費用対効果を知ることが、取組の一層の効率化を図るとともに、合理的な意志決定を行っていくために極めて重要であると考えられます。

 事業者にとって自社の環境保全コストを正確に把握することは、環境マネジメントシステムを的確に構築し、運営していくに当たって有効であり、また必要であると言えます。つまり、自らの環境パフォーマンスを測り、管理し、取組の効果を評価する指標の一つとしても環境保全コストを活用することができるのです。

 どの程度の環境保全コストを支出し、どの程度の効果を上げることができたのか、その費用対効果を把握することは、健全な事業経営にとって今や必要不可欠の要素です。特に事業者がより少ないエネルギーと資源、より少ない廃棄物で、より良い製品を生産していくという環境効率をあげていくためには、それらの物理的な量の管理とコストの把握及び管理は極めて重要であると言えます。


環境保全コストの公表が事業者を評価する尺度の一つとなりつつあります。

 また、今日では、事業者の環境への取組等に関する様々な情報を、環境報告書などを通じて公表していくことが各方面から求められつつあり、その情報の内容と公表状況が、事業者を評価する尺度となりつつあります。そして事業者が公表する情報の重要な項目の一つとして、環境保全コストを含めることが望まれています。

 環境保全コストの額や予算等に占める割合、その経年変化等を公表することにより、社会は、その事業者の環境保全に対する取組の姿勢や考え方を知ることができます。既に数多くの事業者が環境報告書を作成し、公表していますが、その中で環境保全コストを公表する事業者が、徐々に増えてきており、その必要性は多くの事業者が認識しつつあります。


環境保全コストの把握・公表のためのガイドラインの必要性が高まってきて います。

 このような中で国際的には、国連、米国環境保護庁、カナダ会計士協会等において環境保全コスト及び環境に係る財務情報等の把握と公表のあり方などに関する検討が進められています。

 我が国では、環境庁が平成3年度より毎年実施している「環境にやさしい企業行動に関する調査」の平成10年度調査において、環境保全コストの把握・集計及び公表に関する何らかの指針、ガイドライン等が必要である、と回答した事業者が約5割以上(N=1,051)にのぼっています。

 今や環境保全コストに関する情報の提供側と受け手の側の双方にとって、共通の尺度としてのガイドラインが必要となってきていると言えるでしょう。


ガイドラインの中間取りまとめを行いました。

 この様な状況を踏まえて、環境庁では平成8年度より、「環境保全コストの把握に関する検討会」を設置し、そのあり方を検討してきましたが、この度、「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン」の中間取りまとめを行いました。

 このガイドラインの中間取りまとめは、事業者の方々が、環境保全コストの把握を適切に行うとともに、主に環境報告書等を用いて環境保全コストの公表を行う際の、集計し把握すべき項目、集計に当たっての考え方、方法等を取りまとめたものです。なお、公表される環境保全コスト情報の主な受け手としては、環境報告書の利用者を想定しています。

 また、このガイドラインで把握された環境保全コストの内容等を分析することにより、環境マネジメントシステム等に関する内部管理ツール(省エネルギー・省資源・廃棄物削減等の環境に関する取組により削減されたコストの把握等)としても活用することができると考えています。

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皆様のご意見、ご提案をお寄せ下さい。

 このガイドラインの中間取りまとめが多くの方々に活用され、事業者の環境保全コストの把握、公表が進展することを願っています。今後、皆様のご意見や取組事例を基に、中間取りまとめしたガイドラインの改善を図り、平成11年度中を目途にガイドラインの完成を目指していきたいと考えております。是非ともご活用いただき、忌憚のないご意見、ご提案をお寄せ下さい。

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