環境産業の世界市場に関する推計を見ると、例えば、「グリーン・ジョブ:持続可能な低炭素社会における働きがいのある人間らしい仕事を目指して」(2008年、国連環境計画(UNEP)、国際労働機関(ILO)等が作成。以下「グリーン・ジョブ報告書」という。)では、2006年時点で約1.37兆ドルとされる環境産業の世界市場が、2020年までに2.74兆ドルへと倍増することが見込まれています。
また、アメリカの民間会社の推計によると、環境産業の範囲や分類が異なりますが、2000年から2008年までの環境産業の世界市場は年率4%強の割合で伸びてきています。2009年には世界的な経済危機を受けマイナス成長が見込まれるものの、2010年以降は再び3%強の成長を続けるものと予測されています。これを地域別に見ると、2008年から2012年にかけてアジアが最も大きく成長し、約200億ドルの市場拡大が見込まれます。
環境省においては、OECDの環境分類に基づき、わが国における環境産業の市場規模及び雇用規模について調査を行っています。この調査によれば、平成12年度以降、わが国における環境産業の市場規模及び雇用規模は継続して拡大基調にあります。平成20年度について見ると、市場規模で約75兆円、雇用規模で約176万人と推計されます。
わが国の環境技術力を特許件数から見ると、アメリカや欧州における環境分野の特許件数が近年ほぼ横ばい傾向にある一方で、わが国で登録される環境分野の特許件数は、上昇傾向にあり、平成20年にはおよそ2,000件となっています。また、環境技術の特許出願に占める各国シェアでは、大気・水質管理、固形廃棄物管理、再生可能エネルギーなどの各分野において、わが国は高い水準に位置しています。
わが国における研究費の総額は、これまで増加傾向にありましたが、今般の経済危機の影響から、平成20年度は約18.8兆円(対前年度比0.8%減)と、わずかではありますが、9年ぶりに減少しました。しかし、環境分野については約1.1兆円(対前年度比2.6%増)となり、ここ10年の間に約3倍の伸びを示しています。
地理的にも経済的にもわが国と密接な関係を有するアジア地域は、急速に経済が成長する一方で、大気汚染、水質汚濁、廃棄物の不適切な処理などの環境問題が深刻化しています。こうしたアジア諸国が持続可能な発展を遂げるためには、経済成長を維持しつつ公害問題を克服してきたわが国の経験と知恵をアジア諸国で共有することが必要です。これにより、わが国の環境技術を積極的に展開することができると考えます。
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