第3節 技術による環境問題克服の経験

我が国は、過去、工場による大気汚染や工場跡地等の土壌汚染等、数々の公害問題に直面しましたが、その度に、様々な環境保全対策を実施して乗り越えてきました。その中で、大きな役割を果たしたものの一つが技術です。その開発と導入の効果は、技術力の向上とそれによる国際競争力の強化等につながります。


ア 石油ショックを契機とした産業分野における省エネルギー
昭和48年の第1次石油ショックによる原油価格の高騰を機に、当時の省エネルギーに関するコストパフォーマンスの最も大きな技術の導入などが、事業者の経営判断として積極的に進められました。原油価格が落ち着いた後も、着実に省エネルギーに対する投資が続けられ、省エネルギー技術の普及が進んでいきました。その結果、我が国の産業分野のエネルギー効率は世界トップクラスとなりました。製品製造の際のエネルギー投入を低く抑えることにより、環境への負荷を低減できるだけでなく、少ないコストで製品を作ることができるようになり、我が国の産業の国際競争力の確保につながりました。

エネルギー効率の国際化比較状況



イ 排ガス規制、燃費対策に対応した自動車の技術
我が国では昭和40年代から自動車の普及が進み、それにつれて自動車の排出ガスによる大気汚染が問題となりました。このような中で、政府は自動車排出ガスの規制に乗り出し、更に時を追うごとに強化してきました。
我が国の自動車メーカーも、排出ガスによる大気汚染の問題に対処すべく、エンジンの燃焼制御及び熱効率の改善、車両の軽量化、排出ガス用触媒などの技術を研究・開発し、製品に導入していくことで、世界トップクラスの排出ガス抑制技術を確立しました。燃費についても技術開発を進め、世界トップクラスの技術を持つに至っています。
自動車の排出ガス抑制技術や燃費の向上は、大気汚染の軽減や二酸化炭素排出の削減に資するという環境保全上の効果だけではなく、商品価値の向上や国際競争力の向上という効果ももたらしました。自動車の排出ガスや燃費の規制は、各国で強化されていく方向にあり、こうした状況が、我が国の自動車メーカーにとっては有利に働いています。実際、第2次石油ショック(昭和54年)の後、小型で燃費の良い日本車は、米国市場で大きく売れ行きを伸ばした実績があります。

米国内乗用車(新車)販売台数と日本車輸入の推移

このほかにも、我が国は数々の環境問題を技術によって乗り越えてきました。その効果は、環境保全のみならず、国際競争力の向上、新たなビジネスチャンスの開拓などの効果を十分に兼ね備えていると言えます。地球温暖化対策においても、技術は重要な位置を占めており、地球温暖化の深刻化に伴い、その重要性はますます高まっていくと言えます。


前ページ 目次 次ページ