1 一人ひとりと企業との相互関係近年の環境保全意識の高まりは、企業に対しても環境問題への対応を求めてきており、企業においても、環境分野の社会貢献活動が活発化しているのみならず、環境に関する経営方針の策定や環境に関する具体的な目標の設定など、より積極的に企業活動の中に環境配慮を取り込んでいく動きが強まっています。また、環境ビジネスも成長してきています。平成12年の市場規模は29兆9千億円、平成22年には47兆2千億円、さらに、平成32年には58兆4千億円に達すると見込まれ、雇用規模はその間、76万9千人から平成22年には111万9千人、平成32年には123万6千人に増加するという推計が出されています。 こうした状況の変化を背景とする、企業による環境配慮型製品の供給やサービスの提供、環境情報の提供、環境教育・環境学習などの取組は、一人ひとりの取組を支える企業の積極的な取組としてとらえることができます。 例えば、製品に関する環境負荷全体を購入者ができる限り考慮できるようにする手法として、エコマークに代表される環境ラベリングは購入者が環境負荷の少ない製品やサービスを選択する際の重要な情報源になっており、グリーン購入・調達の急速な広がりにともなってこのような環境ラベルを表示する製品等の数も増加しつつあります。 また、製品の持つ「機能の取得」を目的に「製品を購入」する場合が多い点に着目し、製品の機能を提供するサービサイジングというビジネスモデルが広がっています。例えば、会員が共同して自動車を利用するカーシェアリングの事業化が各地で進んでおり、これは、直接的な環境負荷低減にとどまらず、家計支出の大きな部分を占める自動車の所有や使用のあり方の見直しを通し、生活全般の見直しに目が向けられることも期待されます。 |
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さらに、企業は、企業を取り巻くさまざまな利害関係者から環境配慮の面も含めて企業評価されます。企業側でも、環境コミュニケーションの重要性が認識されつつあり、インターネットによる情報発信、環境報告書の作成・公表、環境会計への取組などを進める企業数が増加しています。 一方、一人ひとりによる企業への能動的な働きかけは、企業の取組をさらに積極的なものとします。例えば、近年、環境に配慮した商品の購入意欲が高まっているほか、こうした消費者のニーズの高まりに対応したネットワークの形成も進んでいます。また、企業が行う優れた環境保全のための取組等の表彰、エコファンドの登場と相まった環境の観点からの企業の評価、格付け、就職情報誌への企業の環境経営度に関する情報の掲載などの動きもあります。こうした動きの積み重ねが企業の行動を変え、最終的には社会経済システムを環境に配慮したものへと変えていくことにつながっていきます。
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2 一人ひとりと行政との相互関係 行政も社会経済システムの枠組みを作り、基盤を整備する主体として、一人ひとりの行動を促していく役割を担っています。地方公共団体においては、最近、地域環境基本計画の中に住民一人ひとりの役割として、ライフスタイルを変革し、環境に配慮した生活を進める必要があることなどを盛り込むようになっているほか、法定外目的税制度の創設を契機に、自然環境の保全に配慮した行動や買い物時に受け取るレジ袋の削減など、日常生活におけるさまざまな場面における環境配慮を促すため、環境に関する税を導入する動きも見られます。また、日常生活での自動車交通需要の高まりに伴う環境負荷の増大に対応し、自転車を利用しやすい環境の整備、パーク・アンド・ライドシステムなどの社会資本の整備が進められています。さらに、一人ひとりに専門的な知識や豊富な経験を提供することのできる人材の育成、使いやすく整備された環境情報の提供や広報活動も進められています。
一方で、特に地方公共団体においては、一人ひとりが積極的に環境保全施策の策定に参画することが可能となっており、一人ひとりの取組が行政を動かし、住民と行政の協働により施策が実施される例も見られつつあります。
3 その他の主体との関わり一人ひとりの取組を支える担い手は、企業や行政に限りません。 例えば、環境問題に取り組むNPO(Non Profit Organization)の活動は、一人ひとりの日常生活と密接に関連した分野で活動の場を提供する機能を果たしています。個人が日常生活の問題意識からNPOの活動に参加することで、地域の取組や他の主体の取組が促進されることが期待されます。また、マスメディアから発信されるさまざまな情報は、環境意識の高揚や日常の行動様式の方向付けを促すとともに、日常生活の取組の輪を社会に広げていくことにもつながります。さらに、一人ひとりは、近隣の人々、知人・友人、家族等身の回りの人々との関係の中で生活をしていることを踏まえれば、身の回りの人々との情報交換により、日常生活の取組について、意識を高めたり自分自身の行動につなげていくことが可能となります。 このように、一人ひとりの環境保全の取組の広がりが、他の主体の取組を促し、それがさらに一人ひとりの取組を刺激するなど波及のサイクルを生み出します。こうした一連の動きが、最終的にはそれぞれのライフスタイルの変革を加速させることになり得るのです。 |