<第2章の要約>
 今日の環境問題の多くは、市民の日常生活や通常の事業活動に起因し、不特定多数の者が原因者となっており、持続可能な社会を実現するためには、市民・企業・行政などの各主体が社会のあらゆる面で自主的かつ積極的に環境への負荷の低減に取り組むことが必要です。
 この章では、市民・企業・行政の各主体がさまざまな新しい取組を始めていることについて、その背景や意識を考察していきます。


1 意識の変化と行動の変化

 近年、消費者の商品購入時における意思決定に、環境への配慮という新しい判断材料が加わってきています。例えば、商品の購入時には、約95%の消費者が環境保全に配慮した商品を選択すると回答しており、環境にやさしい商品が一般の製品と比べて割高であっても購入すると回答した者が約7割を占めています。また、こうした意識の変化に対し、環境負荷が少ない製品・サービスを優先的に購入するというグリーン購入の動きを支援するため、商品の環境情報を提供する等の取組も始まっています。こうした変化は市場にも変化を及ぼしており、グリーン購入の主要な対象となっている15の商品分野について、総販売額のうち環境配慮型製品の販売額割合を見ると、全体で30%を占めるまでに至っています。

商品の購入時に環境配慮型製品をどの程度考慮するか


総販売額に対する環境に配慮した商品の割合

 さらに、市民のこうした購買に関する意識・行動の変化は、市民が企業に求める社会的役割にも変化を生じさせており、企業が社会的信用を得るために力を入れるべきものとして、回答者の7割が環境保護を挙げている調査結果もあります。また、こうした市民の関心を背景に、企業の優れた環境保全のための取組を表彰するものや、環境経営の格付を行う機関も発足するなど、どの企業がどの程度環境を考慮した経営を行っているのか、外部から評価しようとする動きもでてきています。

今後企業が社会的信用を得るために力を入れるべきこと

 このように、市民の環境への関心の高まりは、商品の購買行動に変化を与えるだけでなく、企業の行動変化の背景ともなり、環境保全型商品の普及等、市場を変える動きにつながっています。

2 市民によるさらなる環境負荷削減の可能性


 市民の意識の変化は、さまざまな環境保全のための取組の実践として表れ、全国各地で展開されています。「環境にやさしいライフスタイル」の普及を図るためのユニークな事例も多く、誰もが取り組めるように一年に一日「市内一斉エコライフデー」を設けた川口市の例や、市民共同で風力発電所を作った北海道浜頓別の例、環境保全等の市場価値を生みにくいサービスのやりとりを地域の人々の発意により活性化させるために地域通貨(エコマネー)を発行する北海道栗山町等の例など、さまざまな取組が全国各地で実践されています。

エコマネーを推進しようとしている主な地域全国マップ

 しかし、こうした取組にもかかわらず、第1章でも見たように、家庭部門のエネルギー消費量等は増加していますが、これは、家電製品の普及や大型化による各家庭での環境負荷の伸びを抑えるほど十分には、省エネ等に向けたさまざまな環境負荷低減への意識が国民全体に広がっていないためと考えられます。
 国民一人ひとりの取組が不可欠なものとなっている今日、環境問題を引き起こす現代のライフスタイルを、環境にやさしく、かつ、私たち自身にとってもより人間的で豊かなものに変革し、持続可能な簡素で質を重視する生活、つまり、「環のくらし」の実現が必要となってきているのではないでしょうか。こうした観点から、特に地球温暖化問題について、各界のオピニオンリーダーからなる「環の国くらし会議」(http://www.wanokurashi.ne.jp)を設置したところです。

一人ひとりの地球温暖化対策

前ページ次ページ