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第5節 先端技術に関する環境保全施策の推進

 近年、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術を中心に技術開発の進展が著しく、それに伴って我が国の産業構造も変化を遂げつつある。
 このような技術の開発・利用に伴い、発生源、排出形態、影響の面で新たなタイプの環境汚染の可能性が指摘されている。
 こうした状況の変化を踏まえ、先端技術の産業利用に当たっては、環境面への影響を事前に十分検討して将来環境問題が生ずることがないよう配慮していくとともに、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に図っていくことが重要である。
 このため環境庁では、先端技術の進展に対応した環境保全の基本的方向について、昭和59年度から3ヶ年にわたり学識経験者による環境技術会議において検討し、その結果を62年4月に公表した。
 先端技術のうちでも、環境影響の可能性について関心の高まっているIC分野については、61年度、環境保全総合調査研究促進調整費により環境庁、厚生省、通産省、労働省の4省庁合同の「IC産業環境保全実態調査」を行った。その結果、IC産業に係る環境問題として、直ちに対応を要する問題は特に見いだされなかったが、各工場における処理施設等の維持管理等に今後とも万全を期す必要があると指摘された。また、?排出防止管理の一層の充実、?技術の変遷、多様性を踏まえた対応、?化学物質の環境影響、処理技術等に関する情報整備と対策の支援・指導について、関係行政機関、関係自治体、業界が連携を取りつつ取り組んでいく必要性が指摘された。
 新素材分野については、昭和62年度、環境庁において「ファインセラミックス環境保全関連資料」の作成を行うとともに、通産省において「ファインセラミックス産業化学物質使用実態及び排出防止技術実態調査」を行った。
 遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーについては、従来より、実験段階における安全性確保のための指針が策定されているが、近年産業利用動向の高まりに伴い、内外において産業利用段階での安全確保のための検討が行われている。我が国では、61年度において、組換えDNA技術の産業利用に係る指針または指針案が関係省庁より公表され、組換え体の閉鎖系利用が開始されている。さらに、組換え体の開放系での利用についても、米国等で野外実験が始められており、我が国においても安全性の確保について、関係機関で検討が行われている。
 環境庁においては、特に、遺伝子組換え微生物等の開放系での利用に対応した環境保全への配慮のため、微生物農薬の安全性評価法の確立のための調査を実施するとともに、62年度より、微生物の監視手法、バイオテクノロジーの環境保全への活用等に関する基礎的な調査を開始した。また、国立公害研究所においては、バイオテクノロジーの環境保全への利用の取組として、バイオテクノロジーを利用した光化学スモッグ等の複合汚染に対して感受性の高い植物の開発に関する研究を実施するとともに、系統微生物維持施設を設置し、環境保全研究に有用な環境の汚染及び浄化に係る微生物の遺伝子保存を図っている。
 なお、環境庁においては、先端技術の利用や化学物質の使用拡大等に伴う新たな汚染可能性への的確な対応を図るための体制の整備を行い、62年10月企画調整局の「研究調整課」を改組し、「環境研究技術課」を設置した。

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