3 化学物質
化学物質は、その用途・種類が多岐・多様であり、現在工業的に生産されているものだけでも数万点にも及ぶといわれている。これらの中には、製造、流通、使用、廃棄物等の様々な過程で環境中に排出され、環境中に残留し、環境汚染の原因となるものもある。
こうしたことから、環境庁では、化学物質の環境における安全性を評価するため、環境残留性が高いと考えられるものから順に、水質、低質等の汚染実態を明らかにするための環境調査を行っている。また、このうち環境中の濃度レベルの推移を長期的に把握していくことが必要なものについては、魚介類等を指標生物とした生物モニタリング等を行うこととしている。
船舶や漁網の防汚剤等として使用されるトリブチルスズ化合物については、60年度の生物モニタリング調査の結果、内湾、内海域の魚介類を中心に広範囲に検出されたため、瀬戸内海において61、62年度に特に調査を行った。62年度は61年度は61年度と比較してスズキでは高く、ムラサキイガイではやや低く、環境汚染状況は概ね横ばいと考えられる(第1-1-14表)。このことから、現在の濃度レベルが直ちに危険な状態ではないと考えられるものの、本物質については、引き続き注意深く監視していく必要がある。
また、白アリ駆除剤として使用されていたクロルデン類については、61年度生物モニタリングの結果、ほとんどの対策生物種から検出され、魚介類における検出頻度は依然として高かった。クロルデン類は、難分解性等の性状を有し、これまで多量に使用されてきたため、今後とも環境中における残留状況を注意深く追跡していく必要がある。
なお、生物モニタリングによる主要汚染物質の検出割合は第1-1-15表のとおりである。また、近年、ごみ焼却処理施設の焼却灰から検出されたダイオキシンや使用済乾電池に含まれる水銀による環境汚染が懸念されていることから、59年度に、廃棄物焼却処理施設や最終処分場において、ダイオキシン及び水銀に係る実態調査を行った。その結果、現在のところ問題になるレベルの汚染はみられなかった。
以上の化学物質による環境汚染の動向については、前述のトリクロロエチレン等による地下水汚染の問題も含め、今後とも十分留意していく必要がある。