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環境白書の刊行にあたって

国務大臣 環境庁長官
稲村 利幸
 昭和62年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回の公害白書を公表して以来、今年は第19回目の白書となります。
 我が国は豊かな自然に恵まれておりますが、一方では狭小な国土条件のもと1億2千万人の人々が住み、世界でもまれにみるきわめて高密度な国土利用がなされております。近年、道路交通公害、生活排水による水質汚濁等の都市・生活型公害、身近な自然の喪失、さらには都市環境の質といった環境問題が重要性を増しておりますが、これらの都市型の環境問題は、こうした点とも密接なかかわりを持っています。
 また、今日における国土利用の動向をみると、東京圏への人口や金融・情報機能等の新たな集中、地域間・国際間の交流促進のための高速交通網整備への要請の高まり、先端産業やリゾート開発を核とした地域振興の動き等注目すべき新たな潮流が見られます。こうした動きは、我が国経済社会の国際化、情報化、技術革新等の進展を背景としたものでありますが、その反面、環境への適切な配慮を怠った場合には、既に抱えている環境問題の解決を一層困難にしたり、新たな環境問題を発生させるおそれもあります。
 こうした状況にかんがみ、今年の白書では、国土利用構造の変化と環境問題のかかわりに進点を当て、国土利用の新たな変化に対応した環境保全上の課題を明らかにしております。
 このような問題に適切に対処していくためには、政府の努力はもとより、国民一人ひとりのよりよい環境づくりへの理解と協力が不可欠であります。
 この白書によって、国民の皆様の環境問題についての認識と政府の施策に対する理解が深まり、21世紀に向けて健康で恵み豊かな環境を引き継いでいくことに寄与できれば幸いであります。
昭和62年5月

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