開発途上国は、砂漠化、熱帯林の減少等の人口圧力や環境資源の不適切な管理に起因する環境問題のほか、経済社会開発の進展に伴い、先進国が経験してきたような環境汚染の問題に直面している。開発途上国では、開発と並行して環境行政機構、環境法制の整備等に取り組んでいるが、通常、技術的経済的基盤が不十分であり、環境保全対策を効果的に進めるためには先進国からの援助が必要となる場合も多い。特に、環境保全対策に数多くの経験と実績を持つ我が国に対する期待が近年高まっており、開発途上国から我が国に対する環境技術協力の要請件数は増大しつつある。このため、国際協力事業団の技術協力の一環として、環境技術協力を推進するとともに、より効果的な協力事業の推進方策について検討を行っている。
61年度には次の分野の技術協力が実施された。
(1) メキシコ市大気汚染対策調査
メキシコ政府は、我が国に対しメキシコ市の大気汚染対策に係る技術協力を要請してきたため、これを受けて我が国は、61年7月国際協力事業団の技術協力(開発調査事業)の一環として協力を開始した。本事業の目的は、メキシコ市を対象地区として大気汚染の現状、発生源等について調査し、中長期的観点から総合的大気汚染対策を提言することにあり、62年2月から現地調査が行われている。
(2) パラグァイ国イパカライ湖流域水質汚濁対策計画調査
パラグァイ政府のイパカライ湖の水質汚濁対策に係る技術協力の要請を受け、我が国は62年2月以降国際協力事業団の技術協力(開発調査事業)の一環としての協力を開始した。本事業に目的は、イパカライ湖に係る水質汚濁の現状と発生源について調査し、イパカライ湖流域の総合的な水質汚濁対策を提言することにあり、62年度から現地調査を開始する予定である。
(3) 中国上海市大気汚染対策調査
中国製府は、我が国に対し上海市の大気汚染対策に係る技術協力を要請してきた。これに対し我が国は、60年10月以降国際協力事業団の技術協力(開発調査事業)の一環として取り組んできている。本事業の目的は、上海市の大気汚染の現状と発生源について調査し西暦2000年を目標とする大気汚染対策のマスタープランを策定することにあり、61年1月から現地調査が行われている。
(4) 研修事業の実施
開発途上国には、環境保全全体に関する専門的な知識経験を有する行政官・技術者の絶対数の不足に直面している国も多い。
このため国際協力事業団は、環境庁、建設省、厚生省等の協力を得て、集団研修を実施している。61年度には環境行政(10か国11名)、環境技術(水質保全)(8か国9名)、環境技術(大気保全)(10か国10名)、下水道技術(13か国13名)、廃棄物処理(7か国9名)及び産業環境対策(7か国9名)の研修を実施した。また、同事業団は特定の問題に焦点を合わせた個別研修を各国のニーズに応じ随時実施している。