1 国連環境特別委員会(World Commission on Environment and Development)
57年5月のUNEP管理理事会特別会合において我が国が提唱した国連環境特別委員会の設立は、58年12月の国連総会で決議された。同委員会は59年5月ジュネーヴで開催された準備会合により発足し、?21世紀に向けて持続的な開発が可能となるような長期的な環境保全戦略の提案、?国際的環境協力、?人口、資源、環境、開発の相互関係を踏まえた国際的目標の提案等の地球環境を守るための幅広い検討を行ってきた。62年2月には、東京で最終会合を開催し検討の成果を最終報告書としてとりまとめるとともに、東京宣言を発表した。東京宣言は、より豊かで公正で安全な未来を築くため、世界の国々が「持続的開発」を政策目標に組み込むとともに、以下8つの原則に従い施策を展開するよう求めている。
なお、持続的開発とは、将来の世代のニーズの充足を阻害することなく、現在の世代のニーズを満たすような進歩のための方策を指すとしている。
(1) 世界の環境破壊の大きな源となっている開発途上国の貧困を解消するため、環境資源基盤を増進しつつ、経済成長を回復すること。
(2) 新たな経済成長は、持続生、公平性、社会正義及び安全性を社会目標として組み込んだ、従来とは質的に異なったものとすること。
(3) 大気、水質、土壌、森林等の環境を保全し、また、種の多様性を維持するとともにエネルギー、水及び工業原材料の効率的利用を行い、もって資源基盤の保全、増進を図ること。
(4) 人口政策立案にあたっては、これを経済社会開発計画と統合し、また、家族計画の普及、浸透を通じ、人口を持続可能な水準に保つこと。
(5) 環境保全に配慮した技術の開発を進め、リスクの管理を図り、併せて、政策決定における市民参加及び情報公開を行うこと。
(6) 環境破壊未然防止の観点から、政策決定においては、経済、通商、エネルギー、農業等の側面と同時に生態学的な側面に配慮することにより環境と経済を統合すること。
(7) より公平かつ環境保全に即応した形に貿易、資本及び技術の流れを改めるため、市場解放、技術移転、国際金融を通じ、開発途上国の経済と通商の基盤を強化するといった国際的経済関係の改革を行うこと。
(8) 貧困に起因する資源基盤の荒廃は国境を超えて地球的な問題に拡大することから国際協力の緊要性が増している。このため、国際機関が十全な機能を発揮することを助け、通商、投資等に係る国際的なルールを形成、遵守し、各国の利害が必ずしも一致しない問題につき建設的な対話を促進するなどにより、多国間協力を軸とした国際協力の強化を図ること。