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第1節 

1 公害紛争の処理状況

 公害紛争については、「公害紛争処理法」の定めるところにより、総理府の外局である公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が処理することとされている(第7-1-1図)。
 公害等調整委員会は、裁定並びに特定の紛争(いわゆる重大事件、広域処理事件等)について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っている。
 (注) 裁定には、公害に係る被害についての損害賠償責任の有無及びその金額を判断する責任裁定と、被害と加害行為との間の因果関係の存否を判断する原因裁定の2種類がある。
(1) 公害等調整委員会に係属した事件
 61年中に公害等調整委員会に係属した公害紛争事件は、83件(調停事件81件、責任裁定事件1件、原因裁定事件1件)であり、その内訳は、次のとおりである。
ア 調停事件
(ア) 不知火海沿岸における水俣病に係る損害賠償調停申請事件………62件
(イ) 大阪国際空港騒音調停申請事件………………………………………18件
(ウ) 仙台湾における養殖海苔被害等調停申請事件………………………1件
イ 責任裁定事件
 森浦湾における養殖真珠被害責任裁定申請事件…………………………1件
ウ 原因裁定事件
 壱岐における養殖真珠被害原因裁定申請事件……………………………1件
 このうち61年中に新たに申請のあった事件は29件、60年から繰り越した事件は54件である。新たに申請のあった事件は、ア(ア)の水俣病事件28件とイの責任裁定事件1件である。61年中に終結した事件は、水俣病事件44件及び大阪国際空港調停事件17件である。
 大阪国際空港調停事件は、48年から51年にかけて、大阪国際空港に離着陸する航空機の騒音等に関し、伊丹市等空港周辺の住民約2万名から、さらに56年4月には川西市の住民約600名からそれぞれ国(代表者運輸大臣)を相手方として?空港の使用禁止、?騒音等の軽減対策の実施、?慰謝料等の請求の3項目を内容とする調停申請がなされたものである。
 伊丹市等の住民の事件においては?、?については既に調停が成立しており、今回は?について61年12月23日の調停期日において、国は申請人等11,112人に対し、本件紛争の解決金として18億1千万円を支払う等の内容の調停が成立した。これによってこの事件の調停手続はすべて修了した。
 なお、川西市の住民の事件1件については鋭意調停手続を進めている。


(2) 都道府県公害審査会等に係属した事件
 61年中に都道府県の公害審査会等に受理した公害紛争事件は24件で、いずれも調停事件である。
 61年中に終結をみた事件は17件であり、その内訳は、成立10件、打切り6件、取下げ1件となっている。なお、具体的な事件を挙げれば次のようなものがある。
 事例 隣接するアパートのガス瞬間給湯器の燃焼騒音の被害を解決するため調停申請がなされた事件では、関係者が話し合うことにより防音工事の実施、一部給湯器の移転等を内容とする調停が成立した。また、この事件の処理を通じ、審査会は知事に対し、JIS規制値の改正について意見の申し出を行った(東京都)。
 事例 スパイクタイヤ粉じん問題を解決するため、タイヤメーカーを相手に調停申請がなされた事件では、市民とメーカーが共にスタッドレスタイヤの利用・普及等を促進することで合意した。(北海道)

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