5 その他の大気汚染物質対策
(1) 有害物質に対する対策
大気汚染防止法では、ばい煙発生施設から発生する「有害物質」として、窒素酸化物の他に、?カドミウム及びその化合物、?塩素及び塩化水素、?弗素、弗化水素及び弗化珪素、?鉛及びその化合物を規制している。
?〜?の有害物質に係る排出基準は、有害物質の種類ごとに極めて限られたばい煙発生施設に対して設定されているが、これは、有害物質の発生が特定の原料に起因しているためである。このほか、明示的には規制されていない微量の粒子状の物質については、成分の如何によらず「ばいじん」として規制が行われている。
(2) 未規制物質対策
ア ごみ焼却処理施設の焼却灰から検出されたダイオキシン、廃乾電池の焼却に伴う水銀による大気汚染の可能性が指摘された。このため、環境庁及び厚生省において、ごみ焼却処理施設等からの排出実態及びその周辺環境の汚染実態等を59年度において調査した。その結果によると、ダイオキシン、水銀とも問題となるレベルではなかった。
今後とも環境濃度の推移を把握していく必要があるため、水銀については60年度から、ダイオキシンについては61年度から継続的なモニタリングを行っている。
イ アスベスト対策
アスベストは、高濃度の場合にはその吸入によりアスベスト肺などの健康障害を起こすほか、発がん性のあることが知られており、作業環境においては既に労働安全衛生法によって規制されているとともに、近年アスベストによる大気汚染が国際的にも関心を呼んでいる。
このため、環境庁では、56年度から3年計画で各種の調査を実施し、その調査結果に基づき、現在環境大気中のアスベスト濃度は、一般国民にとってリスクは小さいが、環境蓄積性の高い物質であり、広範に使用されていることから、環境大気中のアスベスト濃度の推移を把握する必要があること等の結論を得た。
環境庁では、これを受けてアスベストの環境濃度の推移を把握するため60年度より継続的なモニタリングを行うとともに、関係方面の協力を得て、排出の抑制等に努めている。
ウ この他の有害性が懸念される未規制物質について、順次文献情報の収集整理、測定法、排出実態、環境濃度等の調査を行っており、これらの調査結果に照らし、必要に応じて今後の対策を検討することとしている。
(3) 酸性雨対策
酸性雨は、北米やヨーロッパにおいて、湖沼や森林等の生態系に深刻な影響を与え、国際的な問題ともなっている。我が国においては、このような状況の発生は報告されていないが、過去において眼の刺激等を訴える事例が報告されており、かなり酸性度の高い雨水が観測されたこと、また、生態系に対する被害が明白となった時点では手遅れであることから、酸性雨の発生機構の解明等所要の調査研究を行いその結果を踏まえて必要な対策を検討することとしている。
このため、環境庁では、酸性雨対策検討会の専門的助言を受けつつ、58年度からは雨水成分の観測、湖沼水域及び土壌環境への影響調査等を進めているほか、60、61年度には、農林水産省と共同で関東地域のスギ林の衰退実態と酸性降下物による影響について調査を行った。
さらに、通商産業省及び気象庁においても、所要の調査研究を進めている。