前のページ 次のページ

第7節 

2 交通公害対策の総合的推進

(1) 道路交通公害対策については、今後とも自動車交通量の増大が予想されるなかで、騒音対策、窒素酸化物対策それぞれについて一層の取組の強化が必要であり、当面、以下の方向で対策の推進を図る必要がある。
ア 道路交通騒音対策
(ア) 個別の問題地域において従来からの対策の充実・強化を図るとともに、住宅防音工事の助成、バイパス等への大型車の誘導等を推進する。
(イ) 地域特性に応じた抜本的な対策として、大都市地域においては物流の合理化等による自動車交通総量の抑制、物流施設の適正配置等による大型車の都心部への乗り入れ抑制、適正な沿道土地利用対策を推進し、また、幹線道路沿線の都市地域においては環境保全に配慮したバイパス等の整備により大型車の都市内通過を抑制する。
(ウ) 自動車の適正な維持・管理、運転方法の啓蒙、低騒音車の普及等を推進するとともに、各種騒音低減技術の開発促進に努める。
イ 大都市地域における窒素酸化物対策
(ア) 自動車単体対策として自動車排出ガス低減対策に加え、最新規制適合車やより抵公害の車種への代替(直噴式から副室式のディーゼル車等)の促進を図るとともに、電気自動車についてはごみ収集車への普及等その特性をいかせる分野での普及を進め、メタノール自動車については、ディーゼル車からの代替に向けて、トラック・バスへの導入のための施策を推進する。
(イ) 自動車交通対策としては、物資輸送の効率を高めることによって、トラック走行量の抑制を図る物流対策、公共交通機関の利便性を高めること等によって乗用車利用の抑制を図る人流対策及び環境保善に配慮した環状道路等の整備や交通管制の高度化、交差点構造の改良等によって、交通の分散と円滑化を図る交通流対策を総合的かつ計画的に推進する。
ウ 対策推進体制の整備
 道路交通公害問題は、極めて地域に密着した問題であり、その解決のためには、各都道府県が中心となって、必要に応じ国の出先機関なども参加した協議会等を活用して、地域の態様に応じた実効ある対策を取りまとめる必要がある。また、国においては、関係省庁間の緊密な連絡・協力体制の下に国が行うべき対策を推進するとともに、地方が行う対策を支援していく必要がある。
 上記の取組の方向に沿って、環境庁は、道路交通騒音が著しく、早急な対策を要する地域を中心として、道路交通騒音の防止に係る総合的な計画の策定方法について検討を進めてきており、今後必要な調整を図りつつ、その方向付けをしていくこととしている。また、窒素酸化物対策については、関係省庁・地方公共団体等から構成される検討会において、京浜・阪神地域における交通実態の解析、自動車交通の抑制・分散に資する各種交通対策の実施見込み、実施のための取組方針等の調査・検討を進めており、対策の実施による窒素酸化物削減効果の把握を踏まえつつ、それらを計画としてとりまとめ、その推進を図ることとしている。また、61年度より、環境保全総合調査研究促進調整費を活用して、関係省庁における環境保全に資する個々の具体的事業の推進を図るための各種調査が実施されている。さらに、抵公害車の普及に関しては横浜市におけるごみ収集車への電気自動車の導入など地方公共団体において新たな取組がなされている。国においても抵公害車の試用モニター調査等を通じて、その実用性、経済性等について検討を深めるなど抵公害車の一層の普及促進のための施策を講じることとしている。
(2) 航空機騒音対策については、環境基準の達成に向けて今後とも抵騒音機の導入等の発生源対策や滑走路の移転等の飛行場構造対策を強力に推進していくこととしている。特にこれらの対策だけでは環境基準の達成が見込まれない地域については、当面住宅防音工事等の障害防止対策を実施するとともに、著しい騒音が及ぶ地域については住居系の土地利用から騒音による障害の少ない土地利用への転換や新たな住居系の土地利用の抑制を図るなど計画的な周辺土地利用対策を推進していく必要がある。
(3) 新幹線騒音・振動対策については、環境基準等の達成に向けて、発生源対策を基本的施策としつつ、障害防止対策、周辺土地利用対策を総合的に推進していく必要がある。
 特に、東海道・山陽新幹線については、昭和60年7月に環境基準の最終達成目標期限が到来しており、今後は環境基準の早期達成に向けて下記の施策の着実な推進を図っていくこととしている。
? 基本的施策である音源対策の推進(当面住宅が集合する地域において75ホン以下とする)
? 環境基準を超える区域の住宅防音工事の推進(特に75ホンを超える区域の早期完了)
? 騒音低減技術開発とその活用
? 沿線地域の土地利用の適正化(新たな住居系の土地利用の抑制、騒音により機能を害されるおそれの少ない公共施設等の配置等)

前のページ 次のページ