近年、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術を中心に技術開発の進展が著しく、それに伴って我が国の産業構造も変化を遂げつつある。
このような技術の開発・利用に伴い、発生源、排出形態、影響の面で新たなタイプの環境汚染の可能性が指摘されている。
こうした状況の変化を踏まえ、先端技術の産業利用に当たっては、環境面への影響を事前に十分検討して将来環境問題が生ずることがないよう配慮していくとともに、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に図っていくことが重要である。
このため、環境庁では59年度より3か年にわたり、技術開発と環境との関わりについて調査を行うとともに、学識経験者による環境技術会議において中・長期的視点に立った総合的な検討を行った。
特に、ICについては、全国各地にIC工場が立地しており、IC産業に係る環境問題についての関心が非常に高いこと等から、60年11月に「IC産業環境保全関連資料」を作成するとともに、61年度においては、環境保全総合調査研究促進調整費により環境庁、厚生省、通産省、労働省の4省庁合同のIC産業環境保全実態調査を行った。
また、化合物半導体としてシリコン半導体にはない特性を有することから注目されているガリウムひ素半導体製造業について「ガリウムひ素系半導体環境保全関連資料」をとりまとめ全国都道府県に配布した。
遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーについて、近年産業利用動向の高まりに伴い、内外においてその安全確保のための検討が行われている。61年7月にOECD理事会より組換えDNA生物の産業、農業及び環境利用に際しての安全確保のためのガイドラインが勧告されたのをはじめ、我が国においても、従来の「大学等の研究機関等における組換えDNA実験指針」(54年、文部省)、「組換えDNA実験指針」(54年、化学技術庁、61年8月大量培養実験に係る規定等を改訂)に加え、「組換えDNA技術工業化指針」(61年6月、通産省)、「組換えDNA技術応用医薬品の製造のための指針」(61年12月、厚生省)が策定されるとともに、「農林水産分野における組換え体の利用のための指針(案)」(61年12月、農林水産省)が公表された。
環境庁においては、特に、遺伝子組換え微生物等の開放系での利用に対応した環境保全への配慮のため、61年度により、微生物農薬の安全性評価法の確立のための調査を開始した。また、国立公害研究所においては、バイオテクノロジーの環境保全への利用の取組として、バイオテクノロジーを利用した光化学スモッグ等の複合汚染に対して感受性の高い植物の開発に関する研究を実施するとともに、系統微生物維持施設を設置し、環境保全研究に有用な環境の汚染及び浄化に係る微生物の遺伝子保存を図っている。