1 地盤沈下の現況
地盤沈下の歴史は古く、大正の初期から注目され始めた。代表的な地域における地盤沈下の経年変化は、第5-3-1図に示すとおりである。
地盤沈下は、地下水の過剰な採取が主な原因となるものであり、また地下水の採取は、工場用、建築物用のみならず、水道用、農業用、水産養殖用、消雪用等多岐にわたっている(第5-3-2表)。
昭和59年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は47都道府県のうち36都道府県60地域となっている(第5-3-3図)。
最近における我が国の地盤沈下の特徴をあげると次のようになる。
(1) ここ数年地盤沈下は沈静化していたが、59年度においては、相当程度進行がみられた。すなわち年間地盤沈下量2cm以上の地域は、58年度の22地域(594km
2
)から31地域(814km
2
)に増加し、そのうち年間地盤沈下量4cm以上の地域数は、58年度の6地域(45km
2
)から12地域(161km
2
)と2倍(約3.5倍)に増えた。
この主な原因は、59年が平年の4分の3程度の渇水年であったことと豪雪で消融雪用の地下水需要が増えたことによるものと思われる。
59年度において、地盤沈下の著しい地域は新潟県高田平野で10.1cm、次いで同県南魚沼地域で9.2cmであり、これらはいずれも記録的な大雪の影響を受けたものであり、消融雪用の地下水採取が急増したことに起因している。
年間5cmを超える著しい地盤沈下が認められた地域は、前述の高田平野、南魚沼地域のほか、石狩平野、関東平野のうち埼玉県北東部から茨城県西部、栃木県南部にまたがる広域的な地域、神奈川県県央・湘南、宮城県仙台・塩釜、神奈川県関東平野、筑後・佐賀平野及び千葉県関東平野である。
(2) かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市等の既成都市域は、その後の地下水採取規制の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止している。その他の地域は、長期的には改善傾向にあるものの、(1)で示した地域など一部地域において依然として地盤沈下が継続している。
(3) 長年継続した地盤沈下により、多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じており、ゼロメートル地域では洪水、高潮、津波等による甚大な災害の危険性のある地域も少なくない。