1 交通公害問題に係る主要経緯
(1) 交通公害問題の背景と現状
我が国の交通機関は、戦後の経済復興とそれに続く高度経済成長の時期を通じて、極めて急速な進展を遂げた。この間における交通機関の高度かつ多様な発展は、多くの社会的効用をもたらした反面、大規模な交通施設の周辺地域等で交通公害問題を惹起するに至っている。しかも、公害防止の観点から交通施設と周辺土地利用の整合についての配慮が必ずしも十分でないままに人口が急速に都市部に集中し、そこに各種の交通路線が錯そうしたことが、交通公害問題の解決を一層困難にしている。
(2) こうした交通公害問題に対処するため、各交通機関別に騒音、振動及び大気汚染因子に着目して発生源対策、交通施設の構造体策・周辺対策が鋭意講じられてきており、一定の成果を収めた地域もあるが、なお一層の対策を総合的に推進していかなければ問題解決が困難な地域がある。道路交通公害問題についてはこれまでの諸対策により一定の改善が見られる地域もあるが、自動車に起因する大気汚染のうち二酸化窒素については、大都市圏を中心として依然として環境基準を越える測定局も多く残されている(第1-6-1表)。また、自動車騒音について、当該地域の騒音を代表すると思われる地点又は騒音に係る問題を生じやすい地点について行った全国の測定結果をみても環境基準の達成状況はここ数年横ばいで顕著な改善の傾向がみられず、要請限度を超過するなど騒音の著しい地区が、特に大都市地域や自動車交通の大動脈となる幹線道路沿線の都市地域を中心に多く残されている(第1-6-2図)。
航空機騒音については、主要な公共用飛行場周辺では以前に比して騒音影響範囲が縮小するなど改善傾向がみられるが、なお環境基準の達成に向けて努力を要する状況にある。
また、新幹線鉄道騒音・振動についても、騒音防止対策の実施によりかなりの改善がみられるものの、なお環境基準等の達成に向けて努力を要する状況にある。