(1) 環境汚染の未然防止を図るための措置として環境影響評価を行うことの必要性は、今日、広く認識されているところであり、その制度の確立についての国民の関心も強いものとなっている。
(2) これらの状況を踏まえ、政府として実効ある行政措置を早急に講ずることとし、昭和59年8月に「環境影響評価の実施について」を閣議決定し、国の関与し、かつ、規模が大きく、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業に係る環境影響評価の統一ルールとして「環境影響評価実施要綱」(以下「実施要綱」という。)を定めた。
(3) この閣議決定に基づき、59年11月21日に環境影響評価実施推進会議において「環境影響評価実施要綱に基づく手続等に必要な共通的事項」を決定し、また、59年11月27日に「環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための基本的事項」を環境庁長官が定めた。
(4) これらを受けて本閣議決定に基づく環境影響評価をできるだけ速やかに実施すべく準備作業が進められてきており、対象事業の規模が定められるとともに、60年中にすべての主務省庁で基本通達が出され、61年中に本閣議決定が施行に移される見通しである。
(5) 環境影響評価の技術手法の面については、従来から、その開発と精度の向上に努めてきたところであり、関係省庁において、それぞれの所管に係る問題に関し、このための調査研究が推進されている。
(6) また、環境庁ではエレクトロニクス、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術の開発、利用に伴う環境影響等に関する調査検討を59年度から3か年計画で実施しており、60年度には「IC産業環境保全関連資料」を作成し、各方面に配布した。
(7) さらに、環境庁においては、協議等がなされることになっている事業計画等について環境保全上の観点から所要の意見を述べる等の措置を講じているが、これらについて60年度において関与した主なものは、次のとおりである。
? 港湾計画については、港湾審議会計画部会が4回開催され、和歌山下津港、久慈港、神戸港等の港湾計画に対し意見を述べた。
? 公有水面埋立計画については、羽田沖等の公有水面埋立ての免許を主務大臣が認可するに当たって、主務大臣に対し意見を述べた。
? 大阪湾圏域広域処理場整備計画(フェニックス計画)の基本計画を主務大臣が認可するに当たって、主務大臣からの協議を受けた。
? 国土開発幹線自動車道建設線の基本計画及び高速自動車国道の新設等に関する整備計画については、第27回国土開発幹線自動車道建設審議会が開催され、寒河江・朝日間の基本計画、北海道縦貫自動車道函館名寄線の北海道山越郡長万部町、北海道虻田郡虻田町間の整備計画等について、所要の調整を行った。
? 電源開発基本計画については、電源開発調整審議会が3回開催され、北又渡水力発電所等の計画について所要の調整を行った。
(8) 環境汚染の未然防止を図るためには、以上述べた環境影響評価を推進するほか、国土利用の適正化を図る必要がある。
60年度においても土地利用基本計画の見直しが行われ、同計画に即し、公害の防止、自然環境の保全等に配慮しつつ適正かつ合理的な土地利用が推進されるよう、所要の調整を行った。
このほかとし計画法に基づく市街化区域に関する都市計画についても環境汚染の未然防止の観点から所要の調整を行った。