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環境白書の刊行にあたって

国務大臣 環境庁長官
森 美秀
 昭和61年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回の公害白書を公表して以来、本年は第18回目の白書となります。
 我が国では、科学技術の進歩が産業の発展を促し、高度経済成長を支えましたが、一方で生産活動の急激な拡大と都市化の進展は各種公害を発生させ、自然環境の破壊を招きました。その後、環境保全のための技術開発が活発に行われ、各種規制措置等とあいまって、環境の改善に大きく寄与しています。
 ひるがえって、近年の経済社会の動向をみますと、エレクトロニクス、バイオテクノロジーなどの、いわゆる先端技術の進展が大きな特色としてあげられます。新たな科学技術は、環境保全への活用も期待されていますが、一方で環境に対し、新たな負荷を与えることも懸念されています。
 このような状況をかんがみ、今年の白書は、「高度技術社会における環境保全」をテーマに取り上げ、科学技術の進展に対応した環境保全上の課題について記述しております。
 また、環境問題全般についてみますと、近年、環境の状況は全般的には改善を示してきていますが、交通公害問題、湖沼の水質汚濁、有害化学物質問題、さらには身近な自然や快適で質の高い環境の確保など、取り組むべき多くの課題があります。
 こうした課題を解決するためには、政府の努力はもとより、国民全体の一体となった取組が不可欠であります。
 この白書によって、国民の皆様の環境問題に関する認識と国の施策に対する理解が深まり、よりよい環境づくりに寄与できれば幸いであります。
昭和61年5月

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