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第7節 

2 各種施設・地区の整備等

(1) 休養施設の整備等
ア 休養施設の整備
(ア) 国民宿舎
 国民宿舎は、自然環境に恵まれた休養適地において、国民の誰もが、低廉にしかも快適に利用できる宿泊休養を目的とする施設で、31年度から地方公共団体が年金積立金還元融資を受けて建設し、運営しているものである。58年度末宿舎数は335ヶ所であり(第8-7-1表)、58年度の利用者数は801万人であった(第8-7-2表)。
(イ) 国民保養センター
 国民保養センターは、自然公園等の休養適地に主として地域住民の保養休養に資するため設置された低廉かつ健全な日帰りの休養施設で、42年度から地方公共団体が年金積立金還元融資を受けて建設し、運営しているものである。58年度末センター数は74ヶ所であり(第8-7-3表)、58年度の利用者数は248万人である(第8-7-4表)。
イ 温泉
 我が国は、世界でも有数の温泉国であり、温泉地は国民の保健休養地として極めて重要な役割を果たしている。58年度末現在、全国の温泉湧出源泉数2万103ヶ所(うち自噴源泉5,069ヶ所、動力の装置された源泉9,217ヶ所、未利用源泉5,817ヶ所)、湧出量は1日換算約266万トンに及んでいる。「温泉法」は、これらの温泉を保護し、その適正な利用を図ることを目的としており、温泉を掘削又は増堀する場合、動力を装置する場合には都道府県知事の許可を、温泉を公共の浴用又は飲用に供しようとする場合には都道府県知事又は保健所設置市のうち政令で定める市の市長の許可を受けなければならない旨定めている。「温泉法」による全国の58年の許可件数は、温泉の掘削591件、増掘83件、動力の装置403件、浴用又は飲用1,766件であった。


(2) 野外活動施設地区の整備
ア 長距離自然歩道
 長距離自然歩道は、国民が広く自らの足で自然や史跡などを訪ねることにより、健全な心身を育成し自然保護に対する理解を深めることを目的として設けられるもので、優れた風景地である自然公園や文化財などを有機的に結ぶ長距離にわたる自然歩道として、45年度から整備を進めている。四季を通じて利用できるよう、また、都市住民が容易に利用できるよう配慮しつつ、最初の長距離自然歩道として東海自然歩道1,343kmを49年度に完成したのに次いで、九州地方、中国地方を一巡する九州自然歩道2,043km、中国自然歩道1,906kmを完成し、現在、四国地方と関東地方を一巡する四国自然歩道と首都圏自然歩道を整備中であり、59年度も引き続き整備した。
 なお、58年には、その利用者数は1,718万人に達した。
 それぞれの概要は第8-7-5表のとおりである。
イ 国民休暇村
 国民休暇村は、国立公園、国定公園の自然環境の優れた休養適地に、低廉で健全な宿泊施設を始め、その地域に応じた各種の野外活動施設等を総合的に整備するものであり、36年度から建設が進められ、57年度までに30地区が利用に供されている。このほか、現在1地区において整備中である(参考資料29)。
 国民休暇村の施設のうち、園地、歩道、野営場等の公共施設については、国又は地方公共団体が整備し、宿舎、ロッジ、スキーリフト等の有料施設については(財)国民休暇村協会が整備、運営している。
 国民休暇村の年度別利用者数の推移は第8-7-6表のとおりである。
ウ 国民休養地
 国民休養地は、都道府県立自然公園内等で、自然環境が良好に保持されている休養適地に、自然の保護を図りながら、宿泊施設を始め、園地、野営場、運動広場等の各種野外活動施設を総合的に整備することを目的として45年度に創設された制度であるが、その後55年度にその内容を改め、ふるさと自然公園国民休養地とした。
 ふるさと自然公園国民休養地は、都道府県立自然公園内で、公園を訪れる都市近郊の住民が、積極的に自然に働きかける活動を通じて、より深く自然とふれあい、自然と人間との調和のあり方を身につけることに重点を置き整備する地域であり、5ヶ年で博物展示施設(ふるさと自然公園センター)、園地、野営場、歩道等必要な施設の整備を行うものである。
 59年度は、引き続き8地区の整備を行ったが、6地区で整備を完了した(参考資料30及び31)。
エ 国民保養温泉地
 国民保養温泉地は、温泉地のうち、温泉利用の効果が十分期待され、かつ健全な保養地として大いに活用される場を「温泉法」に基づいて環境庁長官が指定した地域である。58年度末現在72ヶ所9,765.5ヘクタールを指定している。
 59年度は、前年度に引き続き国民保健温泉地(国民保養温泉地のうち、医師の協力を得て温泉の保健的利用を促進することが期待できる条件を備えた温泉地)の温泉センター、園地、歩道等の施設整備に対し国庫補助を行った。
オ 身近な自然活用地域−自然観察の森−
 自然観察の森は、自然の喪失が著しい大都市及びその周辺において、身近な自然との触れ合いを求める国民のニーズが急速に高まっていることにかんがみ、三大都市圏及び政令市等において身近な自然との触れ合いを促進するための拠点をモデル的に整備し、自然保護教育を推進して行こうとするものである。
 この事業は、小動物等との触れ合いを通じて、自然の仕組についての理解を深め、自然に対する愛情とモラルを育くむため、昆虫や野鳥の誘致林など、小動物の生息環境の創出を図るとともに、自然環境の拠点となるネイチャー・センターやその他自然観察路、観察小屋等の施設を総合的に整備することを内容としている。
 59年度から整備を始めたものであり、初年度は、神奈川県横浜市と兵庫県姫路市の2地区において整備に着手した。
カ 自然休養林等
 国有林野事業の一環として、国有林野のうち森林を主体とした風景が優れ、かつ、国土保全機能及び林業経営との調整を図り得るところで、国民の保健及び休養の用に供することが適当と認められる地域を対象として44年度以降指定された自然休養林については、伐採制限、風致施業等を行うとともに、遊歩道、園地等の利用施設を設け、森林の保健休養機能の積極的な発揮を図った。
 59年度においては、既指定の92ヶ所、総面積約11万ヘクタールの維持管理を実施した。
 また、森林レクリエーションの需要の増大及び利用形態等の多様化に対処して、森林の有する多面的機能との調和を図りつつ、国有林野に各種レクリエーション施設を整備した広域かつ総合的な森林レクリエーション・エリアを設定することとし、59年度は、総合森林レクリエーション・エリアの整備事業として、武尊地域について道路等の整備を行った。
キ 観光レクリエーション地区
 観光レクリエーション地区は、国民が自然の中で容易に観光レクリエーション活動を楽しむことができるよう、豊かで良好な自然環境の中に、キャンプ場、遊歩道、ピクニック緑地、スキー場等の多様なレクリエーション施設を配置したものであり、その整備に当たっては、汚水処理施設、廃棄物処理施設を配備する等、環境保全に関しても、十分配慮している。
 運輸省は、このような観光レクリエーション地区の基盤的な施設の整備を実施する地方公共団体に補助金を交付して、その整備を図っている。
 このうち大規模な観光レクリエーション地区は、面積約500ha、計画収容人員約5万人(1日最大)を標準規模とし、48年度からその整備を実施しているが、58年度までに徳島県阿南海岸地区等4地区の整備を完了した。
 また、中規模な観光レクリエーション地区(家族旅行村)は、近年国民の間に広く定着してきた家族旅行に対処するため、面積約50ha、計画収容人員約5千人(1日最大)を標準規模として、53年度から整備を実施しているが、59年度は北海道東積丹・古平海岸地区等13地区の継続整備を行うとともに、新規3地区において実施設計調査を行った。
 なお、59年度は3地区が供用開始となった。
ク 少年自然の家
 少年自然の家は、少年(小・中学校の児童・生徒)を自然に親しませ、自然の中で団体宿泊訓練を通じてその情操や社会性を豊かにし、心身を鍛練し、もって健全な少年の育成を図ることを目的とする社会教育施設であり、特に学校教育活動と社会教育活動の連携を具体的に進める上で重要な役割を有する施設であり、家庭や学校では得がたい体験を得させ、豊かな人間形成を図る上で大きな役割を果している。
 59年度は、公立少年自然の家5ヶ所の建設事業に対して補助金を交付した。
 国立少年自然の家については、59年度は、国立若狭湾少年自然の家を設置し、国立第10少年自然の家(仮称)(鹿児島県)以降の施設整備等を推進した。

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