2 地盤沈下対策
地盤沈下の防止のため、「工業用水法」及び「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」(いわゆる「ビル用水法」)に基づき地下水採取の規制が行われており、昭和59年6月、新たに愛知県尾張西部地域が、工業用水法に基づき地域指定され、現在、両法によりそれぞれ10都府県、4都府県の一部が地域指定されている(参考資料参照)。また、多くの地方公共団体では条例等に基づく地下水採取の規制を行っており、最近はこの種の規制地域が拡大しているが、さらに、新潟県及び千葉県における水溶性天然ガス採取に伴う地下水の揚排水量の削減、東京都等における地下水使用合理化、愛知県、埼玉県等における工業用水使用合理化、静岡県、徳島県等における工業用地下水採取の自主規制等行政指導により地下水採取量の減少を図っている地域もある。
地盤沈下対策のための調査としては、59年度においても引き続いて地下水採取の規制地域の監視測定に必要な地盤高及び地下水位の変動状況並びに地質の調査に要する経費について地方公共団体に対して補助を行うとともに、地盤沈下の予防又は防止を考慮する必要のある地域において地盤沈下の実態把握のための水準測量、地下水採取規制について検討するための地下水揚水量等実態調査、広域的な地盤沈下地域を対象としての総合的な地盤沈下対策計画を立案するための調査、工業用地下水採取の自主規制を指導するための地下水利用適正化検査、工業用水の使用合理化のための指導調査、地下水の水位及び水質の観測等のための地下水保全管理調査、農業用施設及び治水施設の復旧等の対策を検討するための地盤沈下対策調査等各種の調査を実施した。
地下水採取量を削減するための代替水対策としては、関東平野南部地域等において代替水源を確保する事業を行うとともに、代替水供給事業が進められているが、工業用水で特に対策の必要な地域については、「工業用水法」による規制に対応して建設される地盤沈下対策工業用水道事業に対して国庫補助金が交付され、その建設の促進が図られており、59年度には埼玉、千葉及び愛知の各県において4事業が引き続き実施された。60年1月末現在の「工業用水法」に基づく指定地域における地盤沈下防止対策工業用水道事業としては、27事業(給水能力3,153千m
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/日)が完了し、給水に供されている(参考資料参照)。
既に著しく地盤が沈下している地域については、この結果生じた被害を復旧するとともに、洪水、高潮等による災害に対処するため各種の公共土木事業を実施する必要がある。このため高潮対策、内水排除施設整備、海岸保全施設整備、土地改良等の事業が前年度に引き続き、福島、埼玉、千葉、新潟、愛知、三重、大阪、佐賀等の各府県において国庫補助事業として実施された。
現在、以上のような各種の地盤沈下対策が講じられているが、更に地盤沈下の防止の徹底を図るためには地下水の採取規制と同時に水使用の合理化、代替水源の確保を図る等、総合的な対策を講じる必要がある。これらの観点から、地盤沈下防止等対策関係省庁連絡会議及び濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の3地域部会が設置され、濃尾平野、筑後・佐賀平野については、地域の実情に応じた総合的な対策を推進し、緊急に地盤沈下を防止するための地盤沈下防止等対策要綱の策定作業が進められている。なお、地盤沈下に関する総合法制についての検討は続けるものの、当面、この措置に基づく地域対策に全力を傾注することとしている。