2 悪臭防止対策
(1) 悪臭防止法の施行
「悪臭防止法」は、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出を規制することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている。
「悪臭防止法」では、都道府県知事(指定都市の市長を含む)が悪臭物質の排出を規制する地域の指定、規制基準の設定を行うこととしており、58年度末現在で47都道府県10指定都市において、525市667町83村23特別区によって地域指定が行われている(全市区町村数の約39%)。都道府県知事(政令で市区町村長に委任されている。)は、規制地域内の事業場の事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出が規制基準に適合しないことにより、住民の生活環境が損なわれていると認めるときは、事業場を設置している者に対して悪臭防止の措置を講ずるよう改善勧告、更には改善命令を発することができることとされており、58年度中の改善勧告は5件で、改善命令は行われなかった。また、これらの悪臭防止法に基づく措置のほか、悪臭防止に関する行政指導が5,510件行われた。
(2) 悪臭防止法の充実
「悪臭防止法」では、アンモニア等の8物質が悪臭物質に指定されその排出が規制されている。
しかし、規制対象となっていない物質に起因すると思われる悪臭苦情が例年相当数あるため、これらの物質の検索等の調査研究を行っている。今後、調査結果を踏まえ、悪臭物質の追加等について検討を行うこととしている。
また、「悪臭防止法」では、排出水に係る規制基準の設定について規定しているが、排出水中と大気中との悪臭物質濃度の関係が未解明のため、まだ設定されていない。
このため、主要発生源において57・58・59年度に実態調査を実施した。
(3) 悪臭物質の測定方法の改正
「悪臭防止法」に規程する悪臭物質の測定方法は、47年に環境庁告示で定めたものであるが、その後の測定技術の発達等に対応して、精度の向上と操作の簡便化とを図るため、59年に、その一部を改正した。
(4) 悪臭の評価方法の改善
「悪臭防止法」では、現在ガスクロマトグラフ等の機器を用いて悪臭物質の濃度を測定し、その排出を規制する方法をとっているが、悪臭公害はその発生源が多岐にわたっていること、また、ほとんどの場合、低濃度の複合臭であることから、機器測定のみでは、測定結果と住民の苦情が一致しない場合がある。
このため、環境庁は、人のきゅう覚を用いて悪臭の強さを測定する官能試験法(三点比較式臭袋法)を、当面機器測定を補完する見地から活用することとし、さらに調査研究を続行している。