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第2節 

2 振動の対策

(1) 振動規制法による規制
 「振動規制法」では、都道府県知事が振動を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域を指定し、この指定地域内において工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めている。
 都道府県知事による地域指定は、58年度末現在で、47都道府県において615市、669町、96村、23特別区について行われており、全市区町村数の43%である。
ア 工場・事業場振動
 指定地域内にあって、金属加工機械等の政令で定める特定施設を設置している工場及び事業場(特定工場等という。)が規制の対象となるが、指定地域内の特定工場等の数は58年度末現在で100,781である。
 指定地域内の特定工場等には、規制基準の遵守義務が課せられており、都道府県知事(政令で市町村長に委任されている。以下同じ。)は、規制基準に適合しない振動を発生することにより周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、振動の防止の方法等に関し、改善勧告及び改善命令を行うことができる。58年度中に行われた改善勧告は1件であった。これらの振動規制法に基づく措置のほか、苦情に基づく報告徴収等の調査後における振動防止に関する行政指導が492件行われた。
 なお、住工混在の土地利用により、現に振動公害が発生し問題となっている地域では、当該地域から工場・事業場を移転させること等が公害対策の一つの重要な手段となっている。しかし、振動が問題となる工場・事業場の多くは中小規模であり、資金的な面等から移転が困難な場合が多いので、中小企業金融公庫等による工場移転についての融資、公害防止事業団による共同利用建物の建設あるいは工場団地の造成が行われている。
イ 建設作業振動
 指定地域内において行われる建設作業であって政令で定めるくい打作業等の特定建設作業が規制対象となるが、58年度の特定建設作業実施の届出件数は、30,166件である。
 都道府県知事は、特定建設作業に伴い発生する振動が一定の基準に適合しないことにより生活環境が著しく損なわれると認める場合においては、振動の防止の方法等に関し改善勧告または改善命令の措置を行うことができる。58年度中には、改善勧告、改善命令は行われなかったが苦情に基づく報告徴収等の調査後における振動防止に関する行政指導が531件行われた。
 建設作業振動については、振動を発生する建設機械の低振動化とともに、低振動工法の開発・普及が進められている。
(2) 低周波空気振動対策
 近年、人の耳には聞きとりにくい低い周波数の空気振動(低周波空気振動)がガラス窓や戸、障子等を振動させたり、人体に影響を及ぼしたりするとして苦情が発生している(第4-2-2表)。しかし、低周波空気振動は、その発生源が多種多様(第4-2-3表)であり、その適切な防止対策も十分には確立されていない。このため、環境庁では環境中における低周波空気振動の測定や住民アンケート調査、実験室における人体に対する暴露実験等を行い、低周波空気振動の実態と影響の解明に務めている。しかしながら、昭和58年度までの調査研究によれば、一般環境中に存在するレベルの低周波空気振動では人体に及ぼす影響を証明しうるデータは得られていない。
 現実の環境中では低周波空気振動と可聴音は同時に存在していることから、両者が複合した場合の影響及び評価方法等についてさらに調査研究を進めることとしている。

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