2 排水規制の強化等
(1) 上乗せ排水基準の設定
公共用水域の水質保全を図るため、「水質汚濁防止法」より特定事業場から公共用水域に排出される水については、全国一律の排水基準が設定されているが、この統一的な排水基準では環境基準を達成維持することが困難な水域においては、都道府県が条例でより厳しい上乗せ基準を設定し得るものとされており、50年度以来すべての都道府県において上乗せ排水基準が設定されている。
(2) 規制対象の拡大
「水質汚濁防止法」は昭和46年の法施行当初は、日本標準産業分類の細分類による全産業業種約1,100のうち約500業種を規制対象としていたが、その後、逐次政令の改正により追加拡充され、昭和59年度末現在、旧「工場排水等の規制に関する法律」当時の規制対象数の約4倍に当たる約590業種を規制対象としている。
(3) 未規制項目の調査
温排水の規制については、50年12月に中央公害対策審議会水質部会温排水分科会で取りまとめられた「温排水問題に関する中間報告」を踏まえ、温排水の環境容量を算定するための基礎調査等を実施した。
(4) 生活雑排水対策
生活雑排水は、生活排水において大きな負荷を占め公共用水域の水質の汚濁の主要な原因の一つとなっている。
この生活雑排水対策を推進するためには、下水道整備の促進を図るほか、その整備状況を勘案し、地域特性に応じ各種生活排水処理施設の整備を的確に組み合せて進めるとともに、環境保全に対する住民意識の啓発等により家庭からの排出の抑制を図る必要がある。
このため、環境庁においては59年度から新たに、生活雑排水対策推進事業として、モデル地域において、生活雑排水処理モデル計画の策定及び生活雑排水対策実践活動の推進を行っているところである。
また、厚生省においては59年度から新たに生活排水処理施設の整備について補助を行っているところである。
(5) 地下水汚染対策
昭和57年度及び58年度に環境庁が実施した地下水汚染実態調査の結果、トリクロロエチレン等による広範な汚染が認められた。またその後これらの物質による汚染事例が他の地域においても確認されている。
このような地下水汚染の要因については、なお今後解明すべき点があるものの、地下水は一度汚染されるとその回復が容易ではないので、汚染が進行しないうちに予防策を講じていかなければならない。このような考えから、環境庁は、当面の措置として、59年8月から、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び1.1.1-トリクロロエタンを取扱う工場・事業場に対し、これらの物質の地下浸透の防止及び公共用水域への排出の抑制について指導を行うこととした。同時に厚生省、通商産業省及び建設省においても所要の措置を講じた。