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第2節 環境影響評価の推進

(1) 環境汚染の未然防止を図るための措置として環境影響評価を行うことの必要性は、今日、広く認識されているところであり、その制度的確立についての国民の関心も強いものとなっている。
(2) 我が国においては、昭和47年6月の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」以降、個別法、行政指導又は条例、要綱等による環境影響評価が実施されている。
(3) 法制化については、56年4月に環境影響評価法案が国会に提出され、審議が行われたが、58年11月の衆議院解散に伴い審議未了のため廃案となった。また、その後、自由民主党においても検討が行われ、第101回特別国会に対する再提出は見送られることとなった。
(4) 環境影響評価の重要性にかんがみ、政府としては、59年8月に「環境影響評価に実施について」を閣議決定し、国の関与する大規模な事業に係る環境影響評価の統一ルールとして「環境影響評価実施要綱」(以下「実施要綱」という。)を定めた。
(5) 本閣議決定に基づき、59年11月21日に環境影響評価実施推進会議において「環境影響評価実施要綱に基づく手続等に必要な共通的事項」が決定された。これは、実施要綱に基づく手続等に必要な事項のうち実施要綱で「別に定める」とされた事項等実施要綱本文に盛り込まれなかったものを補うものであり、? 事業者の定め方、? 評価書の送付先、? 経過措置、? 主務大臣の定め方、? 手続等の併合の5項目について決定された。
 また、11月27日には、主務大臣が調査、予測及び評価についての指針を定める場合に考慮すべき「環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための基本事項」が環境庁長官により定められた。
(6) 現在、関係省庁において、これらに基づき所要の行政措置をできるだけ速やかに講ずるべく、対象事業の規模や指針を定める等の準備が進められている。
(7) 環境影響評価の技術手法の面については、従来から、その開発と精度の向上に努めてきたところであり、関係省庁において、それぞれの所管に係る問題に関し、このための調査研究が推進されている。
(8) また、環境庁ではエレクトロニクス、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術の開発、利用に伴う環境影響等に関する調査検討を59年から3ヵ年計画で開始したところである。
(9) さらに、環境庁においては、各種公共事業等のうち、法令等により、事業計画の決定又は認可に際し環境庁に協議等がなされることになっているものについて、環境保全上の観点から所要の意見を述べる等の措置を講じているが、これらについて59年度において関与した主なものは、次のとおりである。
? 港湾計画については、港湾審議会計画部会において、下関港、今治港、木更津港等の港湾計画に対し、意見を述べた。
? 公有水面埋立計画については、横須賀港内、波見港内等の公有水面埋立ての免許を主務大臣が認可するに当たって、主務大臣に対し意見を述べた。
? 電源開発基本計画については、電源開発調整審議会において、宮津エネルギー研究所、南港発電所等の計画に対して意見を述べた。
(10) 環境汚染の未然防止を図るためには、以上述べた環境影響評価を推進するほか、国土利用の適正化を図る必要がある。すなわち、これまでのような既存の土地利用の下での汚染物質の排出規制等の対策に加え、今後は地域の自然的特性を踏まえて、環境保全に配慮していく必要がある。
 59年度においても前年度に引き続き土地利用基本計画の見直しが行われ、同計画に即し、公害の防止、自然環境の保全等に配慮しつつ適正かつ合理的な土地利用が推進されるよう、所要の調整を行った。
 このほか都市計画法に基づく市街化区域に関する都市計画についても環境汚染の未然防止の観点から所要の調整を行った。

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