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第3節 

5 健康被害対策

 公害による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図ることは、公害対策の重要な課題である。このため慢性気管支炎等の大気汚染系疾病が多発している地域(第一種地域)及び水俣病、イタイイタイ病等が多発している地域(第二種地域)において都道府県知事等による認定を受けた公害健康被害者に対しては、48年に制定された「公害健康被害補償法」により救済が図られており、同法に基づき93,732人が認定され(59年12月末現在)、補償給付の支給等を受けている。
 第一種地域に係る補償給付等に要する費用のうち2割に相当する分については自動車負担分として、49年度から59年度までの間、自動車重量税収入から相当額を引き当ててきたが、60年3月「公害健康被害補償法」の一部が改正され、60年度から62年度までの3年間においてもこの引当措置を継続することとなった。
 また、第一種地域については、近年、我が国の大気汚染の態様に変化が見られることから、環境庁では、大気汚染と健康被害との関係の検討に資するため、各種の調査を実施してきた。58年11月、これらの調査のデータをとりまとめたことから、中央公害対策審議会にその結果を報告するとともに、我が国における大気汚染の態様の変化を踏まえ、今後における第一種地域のあり方に関して中央公害対策審議会に諮問し、現在、同審議会で審議が進められている。
 水俣病については、水俣病認定申請者の増大等により認定に関する処分に係る未処理件数が多数残されているため(59年12月末現在5,842名)、認定業務の促進が重要な課題となっている。このための施策の一つとして、「水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法」が54年2月から施行され、49年8月末までに認定申請をした者で未だ知事等の処分が行われていないものについては、環境庁長官に処分を求めることができることとされているが、この長官への申請期限が59年9月(一部の者については59年2月)で切れることとなるため、議員立法により、申請期限を62年9月までに延長することを内容とする同法の一部改正が、59年5月に行われた。
 また、水俣病の認定患者は、原因企業から直接補償金の支払いを受けているが、このうち水俣湾周辺で発生した水俣病の患者については、原因者負担の原則を堅持しつつ、補償金の支払いに支障が生じないよう配慮するとの観点に立ち、53年6月の閣議了解等に基づき、関係金融機関による金融支援措置等を要請する一方、熊本県が県債を発行し、これによって調達した資金を原因者たるチッソ(株)に貸付け、チッソ(株)がこれを支払原資に充てるという方式がとられてきた。
 この方式については、59年度末をもって期限切れとなるため、60年度以降の方針について関係省庁で協議を重ねた結果、これを62年度までの3年間延長することとされた。
 また、これに伴い、59年12月25日の水俣病に関する関係閣僚会議において、
? チッソ(株)に対する関係行政機関の指導、関係金融機関による金融支援措置の継続要請及びチッソ子会社に対する日本開発銀行の融資について検討依頼
? 熊本県債に係る資金運用部引受比率の引上げ
 の2点が決定された。

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