近年、経済成長の安定傾向が定着し、省資源・省エネルギー化が各方面で進むとともに、環境政策も整備されてきた。こうしたことを背景として、環境の状況は、全般的には改善を示してきているが、大都市圏を中心に改善の遅れている分野が依然残されており、環境基準の維持・達成に一層の努力を要する状況にある。
　環境汚染の発生源、発生形態にも変化がみられ、経済社会活動の拡大、生活様式の変化等を背景に、工場、事業場に起因するものに加えて自動車などの移動発生源や、生活排水、生活騒音等家庭生活に起因するものが問題となっている。特に、自動車交通等による交通公害問題、あるいは湖沼などの閉鎖性水域における水質の汚濁など緊急な対策を要する問題が生じており、多角的な取組が必要となっている。
　さらに、化学物質については、地下水の汚染の問題が生じ、また、ある種の化学物質の環境中への蓄積の問題が明らかになるなど、環境汚染の動向に十分な留意が必要な状況となっている。
　自然環境についてみると、原生的な自然や動植物の生育環境として重要な自然がますます貴重になってきている。また、身近にふれあうことができる自然は、人間活動の影響により減少してきており、地域の住民にとって大切なものとなっている。
　国際的な環境問題については、欧州や北米における酸性雨のように国境を越える広域的な環境汚染や、大気中の二酸化炭素濃度の上昇、熱帯林の減少など地球的規模の諸問題が生じている。
　本章では、このような環境問題の現状を明らかにする。