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環境白書の刊行にあたって

国務大臣 環境庁長官
石本 茂
 昭和60年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回の公害白書を公表して以来、本年は第17回目の白書となります。
 今年の白書は、都市化社会の環境問題に焦点を当てています。今日、都市化は大都市圏のみでなく、地方圏においても進んでおり、今後国民の大多数が都市的な環境の中で生活するようになるとみられます。こうした中で、都市における環境をいかに安全で快適なものとするかが、今後の環境行政にとって大きな課題となっています。
 都市においては、多様かつ高密度な活動が行われていることから、交通公害問題、生活排水による水質汚濁などのように、個々の活動でみれば環境への影響が大きくない場合でも、集積して環境問題が生じることになりやすい面があります。また、都市化に伴い身近な緑地や水辺が減少してきていることなどから、自然とのふれあいやうるおいとやすらぎのある快適な環境を求める傾向が高まっています。
 このような都市化に伴う環境問題に対しては、公害の発生源対策を進めることや公害の生じにくい都市構造を形成していくことが重要でありますが、これらに加えて、私達一人一人が安全でより快適な環境の保全・創出に向けて行動を広げていくことが求められています。
 この白書によって、国民の皆様の環境問題に関する認識と国の施策に対する理解が深まり、よりよい環境づくりに寄与できれば幸いであります。
昭和60年5月

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