2 国立機関の公害防止等試験研究

(1)　概要
　国立機関の公害防止等に係る試験研究費として昭和58年度に環境庁に一括計上されたものは、117テーマ、30億7,647万円(前年度117テーマ、32億4,844万円)で、これらの試験研究は、警察庁、科学技術庁、環境庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省及び建設省の12省庁に属する55試験研究機関において実施された(参考資料29参照)。
　一括計上による公害防止等の試験研究については、従来から当面する問題のみならず、長期的視野に立った対策推進の基礎を確保するよう配慮し、研究分野ごとに総合研究プロジェクトを編成してその推進を図っている。
(2)　総合研究プロジェクトの推進
　58年度に実施した総合研究プロジェクトの数は10で、その内容は次のとおりである。
ア　大気複合汚染防止に関する総合研究
　本総合研究は、発生源における汚染物質排出防止技術の開発、光化学反応機構の解明、汚染予測評価手法の開発に関する研究を推進するもので、発生源における公害防止技術、汚染予測手法等について10テーマを引き続き研究したほか、新たに大型ディーゼル機関からの排ガスの浄化技術、劣質重質油の無公害化技術及び実用条件下における三元触媒の機能変化の評価手法についての研究を3テーマ実施した。
イ　新汚染物質の評価並びに汚染防止に関する総合研究
　本総合研究は、合成化学物質や重金属等についての生体影響、環境のモニタリング、安全性評価法等に関する研究を推進するもので、環境汚染物質のモニタリング手法、環境化学物質の安全性評価手法等について5テーマを引き続き研究したほか、新たに有機塩素系殺虫剤の代替剤の利用技術及びニトロアレン系化合物の変異原性についての研究を2テーマ実施した。
ウ　排水処理の高度化に関する総合研究
　本総合研究は、各種産業排水等に含有する有機性物質及び有害物質の処理、薬剤の消費及び沈殿物の生成等を考慮した処理、有用物質の回収再利用、処理水の用水化等の技術の開発及び改良に関する研究を推進するもので、有機性排水の物理化学的及び生物化学的処理法並びに重金属等含有排水の物理化学的処理法等について13テーマを引き続き研究したほか、新たに生活排水処理システムについての研究を実施した。
エ　沿岸海域の汚染防止に関する総合研究
　本総合研究は、海洋における汚濁現象の解明、汚濁防止のための技術開発及び汚濁浄化のための技術開発に関する研究を推進するもので、海洋における汚濁現象、汚濁防止技術について6テーマを引き続き研究したほか、新たに開放型沿岸海域における水質及び底質汚染予測技術、底水層の環境計測のシステム化並びに有害液体物質の船内残留量の低減技術についての研究を4テーマ実施した。
オ　廃棄物の処理と資源化技術に関する総合研究
　本総合研究は、廃棄物を適正に処理し最終処分量を減少させ、更に資源として有効利用する技術の開発等に関する研究を推進するもので、廃棄物の処理技術、再利用技術等について10テーマを引き続き研究したほか、新たに含油スラッジの無公害処理技術及び石炭灰―製鋼スラグの有効利用技術についての研究を2テーマ実施した。
カ　自然環境の管理及び保全に関する基礎的技術開発のための総合研究
　本総合研究は、環境の悪化が生物や生態系に与える影響、耕地における水質保全機構の解明、自然環境の調査・監視手法の開発等に関する研究を推進するもので、環境変化が生態系に与える影響、自然環境の調査・監視手法の開発等について5テーマを引き続き研究したほか、新たに薬剤散布の自然生態系に与える影響、生活環境としての森林の有効利用と保全についての研究を2テーマ実施した。
キ　環境汚染の生物に与える慢性影響の解明に関する総合研究
　本総合研究は、微量の重金属や農薬等による環境汚染が動植物に与える遺伝的、生理的、生態的影響や各種環境要因と障害発現との関係等の解明に関する研究を推進するもので、汚染物質が生物に与える遺伝影響、生理影響及び生態影響等について10テーマを引き続き研究したほか、新たに腎機能に対する環境汚染物質の毒性影響、環境汚染物質と細菌毒素との生体内での相互作用、大気汚染物質の心肺疾患に対する量―影響関係、環境汚染による昆虫類の性決定機構の異常と生理生化学的変化についての研究を4テーマ実施した。
ク　都市における環境保全計画手法の開発に関する総合研究
　本総合研究は、環境意識の評価手法、土地利用計画による保全手法、物質流の制御手法及び緑地空間の配置による保全手法の開発に関する研究を推進するもので、物質流の制御手法、緑地空間の配置による保全手法及び都市住民の環境意識の計量・動的評価手法について3テーマを引き続き研究したほか、新たに道路交通流の制御手法、緑化植物の効率的利用技術及び自然環境の保全と利用を重視した住宅地開発技法についての研究を3テーマ実施した。
ケ　騒音・振動の防止及び評価に関する総合研究
　本総合研究は、騒音及び振動について、発生源対策技術、計測技術、伝ぱ防止技術及び予測評価技術の開発並びに影響の解明に関する研究を推進するもので、騒音・振動等の発生源対策技術、計測技術等について9テーマを引き続き研究したほか、新たに騒音源パワーレベルの測定法についての研究を実施した。
コ　環境汚染物質に係る計測技術の高度化に関する総合研究
　本総合研究は、現行の計測技術を評価改良し、その精度を高めるとともに、測定対象の特性にみあった新たな計測技術を開発して分析値の信頼性の確保を図る等計測技術の高度化を総合的に推進するもので、排出源における計測手法、ポイント計測技術、環境汚染物質の監視手法等について14テーマを引き続き研究したほか、新たに各種炭化水素の計測システム、排ガス流量計の現場校正技術、大気汚染物質の動的計測システム、懸濁微粒子の計測技術、高塩濃度水中の微量汚濁成分の分析技術及び有害液体物質の検知システムについての研究を6テーマ実施した。
　58年度においては、以上10の総合研究プロジェクトを推進したほか、湖沼堆積物の調査技術について引き続き研究するとともに、水の微生物汚染の指標化並びに地下水汚染の予測手法及び地盤沈下の予測技術についての研究を3テーマ実施した。