1 現況
昭和57年度全国公共用水域水質測定結果によるとカドミウム等の人の健康にとって有害な物質については、その環境基準値を超える検体数の調査総検体数に対する割合は、46年度に0.57%であったものが年々減少し、57年度には、0.03%と大幅に改善されている。総水銀については、環境基準値を超えると認められる地点はなく、アルキル水銀、有機燐、クロム(六価)及びPCBについては前年度に引き続き1検体も検出されなかった(第3-1-1表)。
一方、BOD,COD等の生活環境の保全に関する項目に関しては、56年度までに環境基準類型のあてはめられた2,982水域(河川2,306、湖沼103、海域573)について、代表的な水質指標であるBOD(又はCOD)の環境基準の達成基準の達成状況をみると達成水域は2,014水域(河川1,505、湖沼43,海域466)と全体の67.5%(前年度66.0%)であり、依然として全体で32.5%の水域においては、環境基準が達成されていない(第3-1-2表)。
次に主要公共用水域のうち133か所における平均水質(BOD又はCOD)について46年度から57年度までの長期的推移を見ると、排水規制の強化等を反映し、水質汚濁の状況は、総体的には改善されつつあるが、最近の推移を見ると、全般的に横ばいの傾向が見られる。(第3-1-3図、第3-1-4図及び参考資料14)
一方、環境基準の達成率を水域別にみると、河川65.3%(前年度63.3%)、湖沼41.7%(42.7%)、海域81.3%(81.6%)であり、特に、都市内の中小河川や湖沼、内湾、内海等の閉鎖性水域で依然として達成率が低く、これが最近における公共用水域の水質汚濁の特徴の一つになっている。
また、地下水については、近年内外の調査事例からその汚染問題が懸念されてきたが、環境庁が昭和57年度に全国15都市において行った地下水汚染実態調査の結果、トリクロロエチレン等による広範な汚染が認められた。地下水は一度汚染されると回復が極めて困難と考えられるので、早急に所要の調査を行い必要な地下水質保全対策を検討する必要がある。
なお、その他の水質汚濁の様態としては、一時的な油等の流出による公共用水域の汚濁、一部の水域についてではあるが、ダムの築造に伴う長期濁水、火山地帯における河川又は湖沼の自然的要因による酸性化、大規模発電所の温排水による環境への影響等の問題がある。