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第5節 

2 交通公害対策の総合的推進

(1) 中央公害対策審議会の提言
 現在、各交通機関別に、騒音、振動及び大気汚染因子に着目して発生源対策、交通施設の構造対策・周辺対策等が鋭意講じられているが、いまだ交通公害問題の解決を見るに至っていない。
 交通公害問題の抜本的解決を図るため環境庁長官は55年6月に、中央公害対策審議会に対し「今後の交通公害対策のあり方について」諮問した。本諮問に対する審議は同審議会交通公害部会において進められ、57年12月には同部会の下に設けられた物流専門委員会及び土地利用専門委員会から報告が行われた。これらの報告を受けた交通公害部会はさらに審議を重ね、58年4月21日、環境庁長官に対し「今後の交通公害対策のあり方について」答申した。
 この答申は、交通公害が我が国の高密度に営まれている社会経済活動や国土利用のあり方と密接なかかわりがある問題であることから、その根源に遡ってこれを抜本的に解決するためには、次のような対策を講ずる必要があると提言している。
? 住宅地等と隔離された低公害走行ルートを整備して大型トラック輸送をこれに集約するとともに、公害対策費用の原因者負担を適切に行うことにより望ましい物流体系を実現すること。
? 交通施設構造の質的向上及び交通施設周辺の土地利用の適正化を図ることにより交通施設と周辺土地利用との整合性のとれた関係を実現すること。答申は、さらに、交通公害問題の抜本的解決には多くの困難が伴うことから、21世紀を展望して、総合的な対策を一歩一歩着実かつ計画的に推進していかなければならないと述べている。
(2) 今後の交通公害対策の充実・強化
 交通公害を防止するため、これまでも発生源対策、周辺対策など各種の対策が講じられてきたが、今後は更にその充実・強化を図る必要がある。その際、交通公害が我が国の社会経済活動や国土利用のあり方と密接にかかわっているということを認識し、その根源にまで遡った多面的な対策を一歩一歩着実に講じていくことが必要である。、また、交通公害の特に著しい地域から優先的に対策を実施する必要がある。
 このため、まず当面の対策としては、交通公害の激じんな地域については、関係機関の一層の協力の下に現行の発生源対策、交通施設の構造対策・周辺対策等を効果的かつ効率的に実施するとともに、さらに、現在講じられている諸対策を拡充・強化する事に加え、環境保全の観点からも交通体系や都市構造のあり方について検討を行い、交通公害対策の総合的推進を図ることが必要である。
 その際、交通公害の態様や障害の程度が地域により大きく異なる実情にかんがみて、全国一律の対策によるだけでなく、地域の自然的、社会的特性による環境条件の差や地域住民の要望に適切に対応する対策を計画的に推進していく必要があり、この面において、地方公共団体の役割は一層重視されるべきである。
 地方公共団体における計画的な交通公害対策の推進を図るため、58年度から、それぞれの地域の自然的、社会的条件を踏まえた総合的な交通公害防止に関する計画の策定手法について調査・検討を進めている。

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