1 環境汚染の未然防止と環境影響評価
環境影響評価、いわゆる環境アセスメントは環境汚染を未然に防止するための有力な手段の一つである。すなわち、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業の実施に際し、その環境影響について事前に十分に調査、予測及び評価を行うとともに、その結果を公表して、地域住民等の意見を聴き、十分な公害防止等の対策を講じようとするものであり、環境汚染の未然防止を図る上で重要性が高い。
55年度の国政、モニターに対するアンケート調査「環境影響評価について」(内閣総理大臣官房広報室)によると、「開発を進めるに当たって環境影響評価を当然行う必要がある」が圧倒的に多く、「場合によっては行う必要がある」を合わせると99%となり、その必要性の認識は深く国民に根付いている。
国際的にみると、アメリカで44年に「国家環境政策法」を制定し、環境影響評価書の作成を義務づけたのを始めとして、スウェーデン、オーストラリア、西ドイツ、フランスなどの諸国において、それぞれの国情に応じ、環境影響評価の実施又は制度の確立をみている。また、経済協力開発機構(OECD)においては49年及び54年に環境影響評価の手続き、手法等の確立及び「環境に重要な影響を与える事業の評価」についての理事会勧告が採択され、58年からは、環境委員会において開発援助における環境アセスメントについて検討が開始される。このように環境汚染の未然防止を図ろうとする環境影響評価は国際的にも共通した課題となっているが、特に狭あいな国土に1億を越える人口を擁し、さまざまな経済社会活動が行われている我が国において、環境影響評価を行うことは重要である。