前のページ 次のページ

第5節 

2 交通公害対策の総合的推進

(1) 交通公害対策の今後の方向
 現在、各交通機関別に、騒音、振動及び大気汚染因子に着目して発生源対策、交通施設の構造対策・周辺対策等が鋭意講じられているが、環境基準等を達成するためには、更にその充実・強化を図る必要がある。
 今後は、まず当面の対策として、交通公害の激じんな地域については、関係機関の一層の協力の下に現行の発生源対策、交通施設の構造対策・周辺対策等を効果的かつ効率的に実施するとともに、さらに、現在講じられている諸対策を拡充・強化することに加え、環境保全の観点からも交通体系や都市構造のあり方について検討を行い、交通公害対策の総合的推進を図ることが必要である。
 その際、交通公害の態様や障害の程度が地域により大きく異なる実情にかんがみて、全国一律の対策によるだけでなく、地域の自然的、社会的特性による環境条件の差や地域住民の要望に適切に対応する対策を実施する必要があり、この面において、地方公共団体の役割は一層重視されるべきであろう。
(2) 中央公害対策審議会に対する諮問
 交通公害問題の抜本的解決を図るため環境庁では、55年6月26日に、中央公害対策審議会に対し、「今後の交通公害対策のあり方について」諮問を行った。本諮問に対する審議は同審議会交通公害部会において進められており、57年12月24日には同部会の物流専門委員会及び土地利用専門委員会から環境保全の観点から望ましい物流体系の実現のための方策及び環境保全の観点から望ましい交通施設の構造及びその周辺の土地利用の実現のための方策についてそれぞれ次のような報告が行われた。
ア 物流専門委員会報告においては、現在、各地で深刻な問題となっている大型トラック公害問題を解決するため、物流体系のあり方を改善することが必要であるという基本的な考え方の下に、今後講ずべき施策の中心的な柱として、次の施策を提言している。
(ア) 低公害走行ルートを整備し、そのルートへ大型トラック輸送を集約することによる「低公害トラック輸送網の形成」を図ること。
(イ) 物流需要の発生、輸送機関の分担等のあり方を環境保全上望ましい方向に導くため、公害対策費用の原因者負担を実現することによる経済的な誘導を基本とすること。
 その他に物流関連施設の適正な配置、輸送の効率化、鉄道、船舶の活用等についても触れるとともに、現に公害が著しい地域についての緊急的な施策について述べている。
イ 土地利用専門委員会報告においては、交通公害の防止のためには、交通施設と周辺土地利用との整合性の確保が必要であるとの基本的考え方の下に、土地利用面からの対策として次の施策を取り上げ、交通施設の種類や地域の状況に応じ有効適切な措置を講ずるよう提言している。
(ア) 交通施設について緩衝用地の確保等「交通施設構造対策」により公害防止上の質的向上を図ること。
(イ) 「周辺土地利用対策」として交通施設周辺にふさわしい土地利用の計画的な誘導等により土地利用の適正化を図ること。
 その他に基本的な交通施設の体系と土地利用のあり方とを有効、適切に調整するよう、広域的、計画的な対処も必要であると述べている。

前のページ 次のページ