戦後の高度経済成長の過程で、加速度的に環境汚染が進み、生活環境が悪化したばかりでなく、人々の生命、健康にまで大きな影響を与える事態が生じた。このため、環境汚染の防止を求める社会的要請が強まり、環境保全対策が強力に推進された。また、近年、経済成長率が低下し、省資源・省エネルギーが各方面に浸透したこともあり、環境への負荷の増大は抑制されるところとなった。このような状況を背景に、環境の状況は、一時期の危機的状況からは一応脱することができ、全般的には改善を示してきている。しかしながら、改善の進まない分野が残されており、特に人口や産業の集中した大都市地域に多い。
　公害の発生源や発生形態をみると、経済社会活動の拡大・変化を背景に、工場、事業場に起因するものに加え、家庭生活等に起因するものが問題となっており、自動車交通等による交通公害、あるいは生活廃水や産業排水が流れ込む湖沼、内海、内湾等の閉鎖性水域の水質の汚濁などの緊急に対策を要する問題も生じており、多角的な取組が必要となっている。
　自然環境についても、かけがえのない原生的な自然がますます貴重になる一方で、居住地周辺の緑化や自然の水際線などが減少しており、自然の浄化作用や環境の快適性が損なわれてきている。
　環境の問題に関する国際的動向をみると、開発途上国を中心に急速に人口が増加し、経済開発が進められる状況の下で、大気中の二酸化炭素濃度の上昇、熱帯林の減少などの地球的規模での諸問題が提起されている。
　本章では、以上のような諸点について国内的にも、国際的にも変化している環境問題の現状を明らかにする。