国務大臣 環境庁長官
梶木 又三
昭和58年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回の公害白書を公表して以来、本年は第15回目の白書となります。
高度成長の過程で、生活環境の悪化と人の生命や健康にまで影響を及ぼすような環境汚染が進み、このため、環境保全対策が強力に進められました。その結果、環境汚染は一時期の危機的状況からは一応脱することができ、近年全般的には改善を示してきております。しかし、改善の進まない分野も残され、交通公害や、湖沼の水質汚濁などの緊急に対策を要する問題も生じており、多角的な取組が必要となっています。
また、原生的な自然の貴重さが増している一方、身近な緑や自然の水辺が減ってきております。
国際的にも、炭酸ガス濃度の上昇や、熱帯林の減少など地球的規模での問題が憂慮されています。
このような状況を背景として、今日環境保全の意義はますます高まっております。良い環境は、適切に保全し利用していくならば、空気を清浄に保ち、水の動きを調整し、肥沃な土壌を維持するとともに、人間性を培い、人々の情緒を豊かにしてくれるものです。これらの働きを維持することは、現在と将来の世代の長続きする繁栄のいしずえとなるものです。
これからの課題は、国民の健康を保護し、生活環境や自然環境を保全することはもとより、将来により良い環境を伝えていくという視点に立って、幅広い政策の推進を図っていくことです。そのためには、国民一人一人の理解と協力が必要であろうと思います。
この白書が、国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に対する理解を深め、より良い環境づくりに寄与することができれば幸いであります。
昭和58年6月