地盤沈下対策としては、地下水の採取の規制を推進し、その予防及び防止を図るほか、地盤沈下状況の監視測定等の調査、地下水の採取の規制に伴う代替水の供給事業、既に著しく地盤が沈下している地域における被害復旧、防災事業等がある。
地下水の採取の規制措置としては、現在「工業用水法」及び「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」(いわゆる「ビル用水法」)に基づき地盤が沈下している地域のうち、工業用水又は建築物用水(冷暖房設備、水洗便所用等)として多量に地下水が採取されている地域を指定して地下水採取の規制を行っており、昭和57年度においても指定地域の拡大を検討することとしている。地盤沈下対策のための調査としては、前年度に引き続き地下水採取の規制地域の監視測定に必要な地盤高及び地下水位の変動状況並びに地質の調査に要する経費について地方公共団体に対し国庫補助を行うこととしている。また、地盤沈下の予防又は防止を考慮する必要のある地域において、地盤沈下の実態は握のための水準測量、地下水採取規制について検討するための地下水揚水量等の実態調査、広域的な地盤沈下地域を対象としての総合的な地盤沈下対策計画を立案するための調査、工業用地下水採取の自主規制を指導するための地下水利用適正化調査、工業用水の使用合理化のための指導調査、地下水の水位及び水質の観測等のための地下水保全管理調査、農業用施設及び治水施設の復旧等の対策を検討するための地盤沈下対策調査等各種の調査を実施することとしている。
一方、代替水の供給事業としては、「工業用水法」に基づく規制地域における代替水の供給のため、国庫補助による地盤沈下対策工業用水道建設事業として福島県、埼玉県、千葉県及び愛知県における5事業を56年度に引き続いて実施するほか、改築事業として地盤沈下地域の既設5事業について実施することとしている。
さらに、地盤が沈下している地域における被害の復旧や防災のため、56年度に引き続き、福島、埼玉、千葉、新潟、長野、愛知、三重、大阪、佐賀等の各府県において河川改修、高潮対策、内水排除施設整備、海岸保全施設整備及び土地改良等の事業を国庫補助事業として実施することとしている。
また、地盤沈下の防止等に係る各般の対策の調整を図り、総合的な対策を推進するため、地盤沈下防止等対策関係閣僚会議決定(56年11月18日)に基づき濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部について、地下水採取規制、水使用の合理化、代替水源の確保、災害対策等総合的な地盤沈下防止等対策要綱を策定すべく検討を進める。なお、地盤沈下に関する総合法制についての検討は続けるものの、当面、この措置に基づく地域対策に全力を傾注するものとする。