1972年6月、世界各国が環境問題の重要性を認識し、スウェーデンのストックホルムに集い、「かけがえのない地球−Onlyone Earth」を守るべく、環境問題を人類生存の共通問題として対処するため国連人間環境会議(ストックホルム会議)を開催してから満10年が経過した。この会議において、人間環境宣言、世界環境行動計画、環境問題に関する国際機構設立等が採択され、同年12月の第27回国連総会の決議により、国連環境計画が発足した。
このストックホルム会議の勧告に基づき、国連においては、国連環境計画を中心として、世界人口の増大と人間活動の規模の拡大を背景とした大気中の二酸化炭素濃度の増加、熱帯雨林の減少等の地球的規模の環境問題に取り組んでいるが、更に、国連砂漠化防止会議等の地球的規模の人間環境の問題に関する一連の会議の開催、環境面への配慮を盛り込んだ「新国際開発戦略」の策定等を行っている。
このような国連環境計画等における活動に対し、我が国は、当初から管理理会の理事国の一員として積極的に参画するとともに、56年度には環境基金に米国に次いで、第2位の資金の拠出する等多大の貢献を行うほか、ラムサール条約等環境関連条約の批准を行い国際協力の推進に努めているところである。
このような地球の環境保全の重要性の認識は、アメリカのカーター大統領(当時)の指示により1980年7月にとりまとめられた「西暦2000年の地球」により、世界的に一層高まった。我が国においても、鈴木内閣総理大臣からの指示により55年9月設置された地球的規模の環境問題に関する懇談会において検討が進められ、同年12月20日「地球的規模の環境問題に対する取り組みの基本的方向について」と題する報告書がまとめられた。鯨岡環境庁長官(当時)は、同報告書を受けて経済協力開発機構、国連環境計画等に、地球的規模の環境問題に対する取組を促がした。経済協力開発機構では、56年4月、経済協力開発機構環境委員会設立10周年を記念した長期的環境問題に関するパネル会合が開催され、引き続き地球的資源・環境問題に関するワークショップが開催されたが、これらに我が国としても積極的に参加することにより、国際機関における地球的規模の環境問題への取組に大きく寄与した。更に56年7月オタワで開催された先進国主脳会談においては、我が国の提唱を受けて、「われわれの長期的経済的政策を策定するに当たっては、地球の環境及び資源基盤を保全するよう配慮が払われなければならない」ことが共同コミュニケに明記された。
ストックホルム会議が1972年6月に開催された当時においては、開発途上国の中には、環境よりも開発が重要であるという考え方も見られた。しかし最近、国連環境計画を中心とした国連等の場において、先進国のみならず発展途上国も、熱帯雨林の減少、土壌の悪化、砂漠化の進行、二酸化炭素濃度の上昇、オゾン層の破壊等の地球的な規模の環境問題の重要性を強く訴えている。国連環境計画においては、国連人間環境会議後10年を記念する国連環境計画管理理事会特別会合において、長期的環境問題に対する共通認識を得るための提案を含む次の10年間の国連環境計画の活動の主要方向についての検討を行うこととしている。
ストックホルム会議後の10年間に、地球的規模の環境問題に対する世界の認識は次第に高まってきた。我が国としても、調査研究の推進、国際機関における活動への参加等本問題の解決のため、積極的に寄与して行くことが必要であり、第96回国会における鈴木内閣総理大臣の施政方針演説においても、「自然と人間活動の調和の問題は、単に限られた地域や国にとどまらず、更には地球的な視野に立って考えていく必要があると思います。」と述べられている。