2 公害防止計画の推進状況
公害防止計画の実施推進を図るため、地域ごとに環境質の改善状況、公害の防止に関する施策の実施状況等を調査した。その概要は以下のとおりである。
(1) 主要環境質の改善状況
公害防止計画に基づく各種施策の推進により、公害防止計画策定地域における環境質は環境基準の達成状況等から見て、次のような改善状況にある。
ア 大気質
二酸化硫黄について、環境基準の長期的評価による達成測定局数の割合(達成測定局数/有効測定局数)を見ると、第1-3-4表のとおり年々着実な改善が見られ、55年度では98%の達成率となっている。
二酸化窒素について、環境基準(1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内またはそれ以下)との対応状況を見ると、第1-3-5表のとおりであり、55年度についてみると、環境基準ゾーンの上限である0.06ppmを超えた測定局は、全有効測定局の6%となっている。また、全国の一般環境大気測定局のうち、ゾーンの上限を超える測定局の全局が公害防止計画策定地域内にある状況である。
また、浮遊粒子状物質についても、環境基準の長期的評価でみると、第1-3-6表のとおり、全般に達成測定局数割合は低く、55年度では、19%の達成率となっており、オキシダントについても、注意報発令基準濃度(1時間値0.12ppm)以上の濃度を観測している測定局が多く、これらについては今後も改善努力が必要である。
イ 水質
河川、湖沼及び海域について、BOD又はCODの環境基準達成状況(達成水域数/全水域数)をみると、第1-3-7表のとおりであり、河川(BOD)については、年々改善が認められるものの、55年度では57%の達成率で未だ汚濁の著しい河川もみられ、湖沼(COD)については、達成率は全国的に低く、55年度では31%の達成率となっており、今後もかなりの改善努力が必要である。また、海域(COD)については全体的には改善傾向にあり、55年度では79%の達成率となっている。
(2) 公害防止計画事業の進捗状況
公害防止計画に基づき地方公共団体等が講ずる施策の進捗状況は、第1-3-8表のとおりであり、昭和56年度(実施見込額)における公害対策事業の投資額は16,309億円、公害関連事業の投資額は、3,536億円であり、合計19,845億円である。
(3) 公害防止対策事業に対する財政上の措置
地方公共団体等が公害防止計画に基づいて実施した下水道整備、緩衝緑地整備、廃棄物処理施設整備、学校環境整備、しゅんせつ・導水事業、農用地土壌汚染対策事業、監視測定機器整備等の公害防止対策事業については、「公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下本節において「公害防止財特法」という。)に基づき、国庫補助(負担)金の補助(負担)率の嵩上げ、地方債の適債事業の拡大、地方債の元利償還金の交付税算入等の財政上の特別措置が講じられた。
国庫補助(負担)金の補助(負担)の嵩上げ額をみると第1-3-9表のとおりであり、56年度については、251億円(見込額)にのぼっている。
なお、公害防止計画策定地域以外の地域において地方公共団体が実施したしゅんせつ事業(水俣港、津松阪港)、農用地土壌汚染対策事業(渡良瀬川流域等16地域)についても、自治大臣が主務大臣及び環境庁長官と協議の上指定したものについては、公害防止財特法により、公害防止計画に基づく公害防止対策事業と同様の財政上の特別措置が講じられた。
これまでに自治大臣により指定された公害防止対策事業は第1-3-10表のとおりである。
なお、これらの特別措置は「行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等の縮減その他の臨時の特例措置に関する法律」により、57年度から59年度の間、他の地域特例措置と同様、一部縮減されることとなった。