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環境白書の刊行にあたって

国務大臣 環境庁長官
原 文兵衛
 昭和57年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回の公害白書を公表して以来、47年に環境白書へと名称を変え、本年は第14回目の白書となります。
 高度経済成長の過程で発生した生命、健康にまで著しい影響を及ぼすような環境汚染に対し、環境政策が急速に整備されてきました。その結果、環境の状況は全般的には改善の傾向を示してきております。しかし、湖沼などの水質の汚濁、交通機関に起因する騒音等今後とも改善のため、一層の努力を続けていくことが求められている問題も多くあります。
 また、貴重な自然も次第に人手が加わり、原生自然域の縮小がみられるような状況にあります。
 更に、炭酸ガスの増加、森林の減少など一国内にとどまらず広い視野に立って対応を求められている地球的規模の環境問題も切実な問題として認識されるようになってきました。
 本年の白書はまずこのような環境の現状を明らかにし、その上に立ってこれまでの環境政策の成果と今後の施策の課題を検討しております。その結果としての提言が幅広い環境政策の展開の必要性となっております。
 つまり、かつてのような公害の防止、自然環境の保全に加えて、緑や水辺などの身近な自然とのふれあい、静けさ、美しい街並みが求められています。このような住みよい、美しい環境をつくりあげていくためには、国民一人一人の理解と協力が必要であろうと思います。
 この白書が国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に対する理解を深め、環境汚染を未然に防止し、豊かな自然環境、快適な生活環境を創造していく上で貢献することができれば幸いであります。
昭和57年6月

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