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環境白書の発刊にあたって

国務大臣 環境庁長官
鯨岡 兵輔
 昭和56年度の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回目の公害白書を公表して以来、47年に環境白書へと名称を変え、本年は第13回目の白書となります。
 高度経済成長とともに環境汚染、自然破壊は深刻なものとなり、国民の生命、健康まで影響を与えることに至り、公害の防止を求める強い社会的要請を受けて、環境行政は急速に整備されて参りました。その結果、環境は危機的状況を脱することができました。環境汚染も全般的には改善傾向にあります。しかし、環境基準の維持達成の困難な汚染因子が多く、窒素酸化物による大気汚染、交通公害、ゴミ処理、空カン、近隣騒音、さらに閉鎖性水域の水質の保全問題等、解決を迫られている多くの環境問題をかかえているのが現状であります
 経済は豊かな国民生活にとって重要であることは言を待ちません。しかし、それはあくまでも手段であってそのために国民の生命、健康が脅かされ、生活環境の劣化が放置されあるいはかけがえのない自然が犠牲になってはなりません。このため第1回の公害白書以来、環境破壊が激化する中で、公害防止のための緊急の環境保全の必要性を訴えて参りました。
 本書の白書は環境庁設立10周年という一つの節目を迎え、環境問題をもう一度根本から見直すという観点から、拡大を続ける人工の物質・エネルギ―の流れと自然の営みを支えております物質・エネルギ―循環との関係から環境問題を取り上げました。高密度な環境利用が行われている我が国において、自然の活力を生かしつつ人工の物質・エネルギ―の流れを多面的に管理していくことを通じて、環境と人間活動とのより望ましい係わり合いを形成していくことの必要性を述べております。また、地球的規模の環境問題をより長期的な視点から取り上げております。
 この白書が国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に対する理解を深め、環境を未然に防止し、豊かな自然環境、快適な生活環境を創造していく上で貢献することが出来れば幸いであります。
昭和56年6月

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