2 環境保全関係予算
55年度における環境保全関係予算は、各種基準等の設定、監視取締りの強化、公害防止事業助成、公害防止関係公共事業等の推進、公害防止調査研究の推進、公害被害者保護対策の充実、自然保護対策の推進等各種の環境行政に対応するために、特に、次の事項を施策の重点として、その積極的な推進を図ってきた。
(1) 各種基準等の設定
大気汚染、水質汚濁等各種の公害防止対策の基本である環境基準、排出基準等の設置を促進するため、55年度においては9億6、356万円が計上された。これにより、大気関係については、排出基準等の設置調査、窒素酸化物についての各種対策に係わる調査等を行うとともに、水質関係については、総量規制の実施に係わる調査、排水規制強化のための調査等を行った。
(2) 監視取締りの強化
大気汚染、水質汚濁の監視取締りを強化するため、55年度においては、75億3、289万円が計上された。このうち、主なものとしては、大気汚染及び水質汚濁の状況を監視するための公害監視等設備経費11億9、347万円、自動車公害審査体制強化のための経費27億8、618万円、化学物質審査規制対策費五億円等が計上されたほか、公害関係事犯の取締り経費3億6、764万円、海上公害監視取締体制の充実強化のための経費2億6、938万円が計上された。
(3) 公害防止事業助成
公害の防止を図るためには、民間企業の公害防止施設の設置等を促進することが必要であり、このため55年度には総額111億4、065万円が計上された。主要なものとしては、公害防止事業団の造成事業等を拡充する等のための経費39億7,216万円のほか、畜産公害に対応するため畜産複合地域環境対策事業費27億8,67万円等が計上されるとともに、漁場環境保全対策費17億7,986万円、金属鉱業事業団運営費9億9,769万円等が計上された。また、赤潮被害を救済するため、養殖共済掛金補助に要する経費6億109万円が計上された。
(4) 公害防止関係公共事業等の推進
公害防止関係公共事業等の推進については、55年度には総額9,724億6,236万円が計上された。このうち主要なものとして、まず、下水道の整備について、下水道事業費6,809億5,800万円が計上された。また、公共用飛行場周辺及び防衛施設周辺における住宅、学校等の騒音防止対策費1,665億4,768万円のほか、廃棄物処理施設整備費763億6,359万円、地盤沈下対策費118億740万円、緩衝緑地事業費51億1,900万円、畜産経営環境整備事業費47億5,200万円、休廃止鉱山公害防止工事費41億1,649万円、港湾公害防止対策事業費22億9,683万円、公害防止特別土地改良事業費16億6,500万円等が計上された。
(5) 公害防止調査研究の推進
環境保全施策を効果的に進めるため、環境汚染のメカニズム、各種汚染物質の人体及び動植物への影響の解明等に関する研究並びに公害防除技術の開発等広範な分野にわたり調査研究の強化拡充を図るため、55年度には総額430億6,908万円が計上された。このうち主要なものとしては、国立公害研究所に必要な経費42億3,270万円、各省庁における公害防止等の試験研究について一括計上を行う国立機関公害防止等試験研究費32億4,844万円、大型工業技術研究開発経費75億8,003万円、新エネルギ―技術研究開発経費71億2,208万円、省エネルギ―技術開発経費61億2,787万円、重要技術研究開発経費7億3,323万円、土壌保全対策経費6億4,553万円等がある。
(6) 公害被害者保護対策の充実
公害被害者保護対策の充実については、55年度には総額195億9,452万円が計上された。その内訳は「公害健康被害補償法」に基づき公害健康被害者の損害を補てんするための補償給付の支給及びこれに必要な調査研究等を行うための経費187億6,988万円、公害紛争の調停、仲裁、裁定等を行うための経費3億5,075万円等がある。また、原因不明の油濁による被害漁業者の救済として1億8,396万円が計上された。
(7) 自然保護対策の推進
自然環境の保全を図るため、55年度には総額1,056億8,090万円が計上された。このうち主要なものとしては、開発等による破壊から自然環境や史跡等を保全するため、民有地の買上げを行う経費等92億9,100万円、自然環境における野外レクリエ―ション等の余暇活動の増加等に対するため、自然公園等の整備、自然休養林の利用、観光レクリエ―ション施設の整備等各種休養施設の整備促進を図る経費等43億8,917万円、都市の緑地等を推進するための公園事業費797億2,500万円等がある。また、港湾や海岸の環境保全整備を図るため、59億3,100万円が計上された。
(8) その他
以上のほか、総額59億4、041万円が計上されており、このうち主要なものは、大気汚染地域等における公立小中学校の児童生徒の特別健康診断、移動教室及び学校環境の緑化等を推進する経費5億3、130万円、省資源・再資源化対策のために要する経費3億312万円等がある。