我が国においては、昭和35年に始まる1960年代の高度経済成長の過程で、地域的な集中を伴った加速度的な環境汚染とかけがえのない自然の改変が進行した。そのため公害の防止を求める強い社会的要請を受けて、1970年代に入り本格的な環境保全の取り組みが始まった。公害防止施策が1970年代に急速に整備されてきた結果、環境汚染は一時の危機的状況を脱するとともに、経済が安定成長へ移行する中で省資源・省エネルギ―も進み、環境汚染は全般的には改善傾向を示すこととなった。
しかし、産業構造の変化、都市的な経済社会活動の増大、都市域の拡大など産業化と都市化が進展するなかで、公害の種類と発生源は多様化の傾向を強めるとともに、環境基準の維持・達成のためにはさらに一層の努力が必要な汚染因子も多く、公害問題の所在は地域的に多様なものとなってきているといえる。また、人々の自然に対するニ―ズは強まっていく中で自然改変のあり方を問い直し、自然が持っている豊でかけがえのない機能を積極的にに活かして行く必要性を高めているといえる。このような国内における環境問題への対応と同時に、環境汚染の拡散と世界的な産業化の浸透に伴って地球的規模の環境問題に対する新たな視点が求められているといえる。