3 野外レクリエーション施設地区の整備
(1) 長距離自然歩道
長距離自然歩道は、国民が広く自らの足で自然や史跡などを訪れることにより、健全な心身を育成し、自然保護に対する理解を深めることを目的として設けられるもので、優れた風景地である自然公園や文化財などを有機的に結ぶ長距離にわたる自然歩道である。
四季を通じて利用できよう、また、都市住民が容易に利用できるよう配慮しつつ、最初の長距離自然歩道として東海自然歩道(関係都府県:東京、神奈川、山梨、静岡、愛知、岐阜、三重、奈良、滋賀、京都、大阪の11都府県、約1,350km)を49年度に完成させ、多数の国民の利用に供している。次いで九州自然歩道(関係県:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の7県、計画延長2,088km)を55年度中の完成を目標に整備を進めることとし、54年度は516kmを整備し、また、中国地方を一巡する中国自然歩道(計画延長1,898km)について、54年度は421kmの整備を実施した。
更に、54年度には、昨年度に引き続き自然歩道としての「四国のみち」の路線の検討を行うため「四国のみち保全整備計画調査」を実施した。
(2) 国民休暇村
国民休暇村は、国立公園、国定公園の自然環境の優れた休養適地に、低廉で健全な宿泊施設をはじめ、その地域に応じた各種の野外活動施設を総合的に整備するものであり、36年度から建設が進められ、54年度までに29地区が利用に供されている。このほか、現在2地区において整備中である(第8-7-5表)。
国民休暇村の施設のうち、園地、歩道、野営場等の公共施設については、国又は地方公共団体が整備し、宿舎、ロッジ、スキーリフト等の有料施設については財団法人国民休暇村協会が整備、運営している。
国民休暇村の年度別利用者数の推移は第8-7-6表のとおりである。
(3) 国民休養地
国民休養地は、近年著しく増大している野外活動需要に対応して、都市から比較的到達の容易な都道府県立自然公園等で自然環境が良好に保持された休養適地に自然の保護を図りながら、宿泊施設をはじめ、遊歩道、園地、野営場、運動広場、休憩所等の各種野外活動施設を総合的に整備する保健休養施設である。
45年度から地方公共団体が環境庁長官の承認を受けて整備運営しており、54年度末までに(第8-7-7表)のとおり41地区が承認を得て整備中である。
国民休養地における施設整備については、国民宿舎、国民保養センネー、プール、球技場等の施設は年金積立金還元融資(特別地方債)により整備しており、都道府県立自然公園内の国民休養地については、3分の1の国庫補助金により、歩道、園地、駐車場、野営場等の公共施設の整備に助成した。
(4) 国民保養温泉地
温泉地のうち、温泉利用の効果が十分期待され、かつ健全な保養地として大いに活用される場を「温泉法」第14条に基づいて環境庁長官が指定した地域が国民保養温泉地である。54年度末現在69か所8,735.6haを指定している。国民保養温泉地においては、環境庁長官が温泉利用施設の整備及び環境の改善を図るため、必要な温泉地計画を定め都道府県がこれに基づく公共施設を整備する場合は国民保養温泉地施設整備費補助金(補助率2分の1、負担率3分の1)が交付されることとなっており、54年度においては温泉館、園地、駐車場等の施設を対象として国庫補助を行った。
(5) 自然休養林等
国有林野事業の一環として、国有林野のうち森林を主体とした風景が優れ、かつ、林業経営との調整が図り得るところで、国民の保健及び休養の用に供することが適当と認められる地域を44年度から自然休養林として指定し、伐採制限、風致施業等を行うとともに、遊歩道、園地等の利用施設を設け、森林の保健休養機能の積極的な発揮を図ることとしている。
54年度においては、53年度までに指定を完了した92か所、総面積約11万haの維持管理を実施した。
また、森林レクリエーションの需要の増大及び目的形態等の多様化に対処して、森林の有する多角的機能との調和を図りつつ、国有林野内に各種レクリエーション施設を整備した広域かつ総合的な森林レクリエーション・エリアを設定することとし、54年度は、総合レクリエーション・エリアの整備事業を武尊地域及び八幡平地域において引き続き行い、道路の新設等を実施した。
(6) 観光レクリエーション地区
観光レクリエーション地区は、国民が自然の中で、手軽に観光レクリエーション活動を楽しむことができるよう豊かで良好な自然環境の中に、キャンプ場、遊歩道、ピクニック緑地、スキー場等の多様なレクリエーション施設を配置したものであり、その整備にあたっては、環境保全に関しても十分配慮している。
国は、48年度からこのような観光レクリエーション地区の中核的な施設の整備を実施する地方公共団体に対して補助金を交付して、その整備の保進を図っている。このうち、500ha程度の規模で5万人/日の利用者を収容可能な大規模観光レクリエーション地区の整備は、48年度から実施しており、54年度は、前年度に引き続き、群馬県武尊山地区、岡山県奥津地区、和歌山県煙樹海岸地区及び徳島県阿南海岸地区の整備を行った。
これに加え、53年度からは、家族旅行の増加に対応するため、新たに、大規模観光レクリエーション地区の10分の1程度の中規模観光レクリエーション地区(いわゆる家族旅行村)の整備を開始し、54年度においては、富山県立山山麓地区、大分県安心院地区の継続整備と、秋田県秋田市太平山仁別地区、福島県高湯地区、島根県奥出雲地区の新規着工、及び岩手県岩洞湖地区、茨城県常北地区の新規実施設計調査を行った。