1 カドミウム汚染に係る健康調査研究
(1) 健康調査
カドミウムは、前節155/sb2.6.1>の4で述べた「イタイイタイ病」の原因のひとつであるといわれている。
このため、健康被害発生の未然防止の見地から、カドミウム環境汚染の要観察地域として、宮城県鉛川・二迫川流域(鶯沢)等全国7地域を指定し、地域住民の健康調査を実施している。
また、要観察地域以外のカドミウム汚染地域においても同様の健康調査を実施している。(第6-2-1表)
これらの住民健康調査を通じ、富山県神通川流域を除いてイタイイタイ病患者は発見されていない。また、これらの住民健康調査のうち、51年度から53年度にかけて実施された秋田県等7県の住民健康調査については、「イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する総合的研究班」によって、54年11月に、「カドミウムによる環境汚染地域住民健康調査成績の解析および結果報告書」として、その調査成績のとりまとめが行われた。
この報告書によれば、疫学的な検討の結果、つぎのような点が明らかにされている。
? カドミウム汚染と尿糖・低分子量蛋白及び近位尿細管機能異常との間に関連性を認めた県もあったが、認められなかった県もあった。その原因については、さらに詳細に検討を加える必要がある。
? カドミウム汚染地区の受診者4,658人のうち、18人については、医師の指導を受けることが望ましく、また、39人については、医師の指導は要しないが、今後の経過を見るべきである。
? 長崎県の受診者のうち、その後死亡した一女性については、剖検の結果、軽度の骨軟化症が認められたが、現時点では、その原因を特定できず、また、富山県のイタイイタイ病とはかならずしも一致しなかった。
この報告書を受けて、環境庁においてカドミウム汚染と近位尿細管機能異常との因果関係について、さらに詳細な調査・研究を進めている。
(2) イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する研究
51年12月に発表された「カドミウムの人体影響に関する文献学的研究」においても指摘されているとおり、イタイイタイ病の原因及びカドミウムの人体影響については、なお未解明な事項もある。このため、環境庁においては、イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する総合的研究班に委託して、サル及びラットを用いた栄養要因あるいは他の重金属を加味したカドミウムの微量長期投与実験、カドミウム汚染地域住民及びカドミウム作業者の血液・尿の比較分析等による腎尿細管機能異常に関する研究、カドミウム汚染地域住民の死因等に関する疫学調査、カドミウム汚染地域住民の病理学的研究等の各調査研究を引き続き実施している。