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環境白書の刊行にあたって

環境庁長官
土屋 義彦
 昭和55年の環境白書をここに公表いたします。昭和44年に第1回目の公害白書を公表して以来、47年に環境白書へと名称を変え、本年は12回目の白書となります。
 1960年代の高度経済成長期は、公害と自然破壊の激化から深刻な環境問題を生み、これが大きな社会問題になったことは私達の記憶に新しいところです。このため、1970年代には緊急を要する政策課題として、公害防止を中心に環境保全のための法律体制と行政組織が急速に整備されてきました。そして、1980年を迎えた今日、環境政策は1つの節目を迎え一層の質的充実と幅広い展開が求められております。本年の白書はこのような視点から、長期的に環境政策をふりかえり、それを踏まえて1980年代を展望いたしております。
 今日、環境に対する国民の強い関心と公害防止を求める強い社会的要請に支えられて、施策の充実が図られ、公害の危機的な状況を脱することができました。しかし、産業公害だけでなく生活により身近なところで都市・生活型公害が発生するなど、生活環境の質は必ずしも改善しているとはいえない現状にあります。また、環境をめぐる経済社会の条件は変化を続けており、今後とも、改善の努力を続けていく必要があります。
 この白書が、国民各位の環境問題に対する認識と国の施策に対する理解を深め、環境汚染を未然に防止し、豊かな自然環境、快適な生活環境を創造していく上で貢献することができれば幸いであります。
昭和55年6月

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