我が国における環境の現状は、硫黄酸化物による大気汚染や有害物質による水質汚濁等一部汚染因子においては改善が見られるものの、一般的にはなお一層の改善を要し、かつ多様化している面もあり、その解決を図り人の生命及び健康の保護を図るとともに、生活環境を保全していくことは重要な課題となっている。
環境行政を更に前進させ、この課題を解決していくため、昭和54年度においては、次の事項に重点を置き、その積極的な推進を図っていくこととしている。
(1) 各種基準等の設定
大気汚染及び水質汚濁等各種の公害に係る環境基準、排出基準等の設定及び改定、規制対象施設の拡大等を図るとともに、水質汚濁対策について、総量規制を実施し、窒素酸化物について総量規制の導入に向けて作業を進める等総合的な対策を推進するほか、また、騒音、振動、悪臭及び廃棄物、農薬対策等に関する調査検討を進める。更に、長期的な展望の下に交通公害の抜本的な対策を推進するための調査検討を行う。
(2) 監視取締りの強化
環境汚染の状況を的確には握し、これに即応した適切な措置を講ずるため、公害監視測定機器の整備を一層推進するほか、自動車公害審査体制の充実強化を図るとともに、公害関係事犯の監視取締り体制の強化を進める。また、各種化学物質による環境汚染を防止するため、化学物質の審査、規制を引き続き行う。
(3) 公害防止事業助成
公害防止の実効を確保するためには、各種規制、監視取締りを徹底させるとともに、事業者の公害防止施設整備等の一層の促進を図る必要がある。このため、特に資金力に乏しい中小企業に重点を置いて、公害防止事業団、中小企業金融公庫、国民金融公庫、日本開発銀行等の政府関係機関の助成を推進する。
また、水質汚濁等による漁業被害の防止のための漁場保全対策、畜産業の悪臭防止等各種の公害防止のための事業助成の拡充を図るほか、養殖漁業における赤潮被害を救済するため養殖共済掛金への助成を行う。
(4) 公害防止関係公共事業等の推進
生活環境整備のための社会資本の特段の充実を図ることとし、下水道、廃棄物処理施設、緩衝緑地の整備等の公共事業を推進する。
また、防衛施設周辺及び特定飛行場周辺における騒音問題に対処するため、民家、学校等の防音工事助成、住宅の移転及び土地の買取り補償、周辺地域の適正な土地利用の促進等の強化を図る。更に、ヘドロ汚染、農用地の土壌汚染等いわゆる蓄積性汚染問題に対処するため、しゅんせつ事業、客土事業等を計画的かつ早急に実施する。その他、地盤沈下対策、休廃止鉱山鉱害対策等を積極的に推進する。
(5) 公害防止調査研究の推進
環境保全施策を効果的に進めるため、環境汚染のメカニズム及び人間、動植物に対する影響の解明、公害防除技術の開発並びに新エネルギー技術の研究開発等広範な分野にわたり調査研究の強化拡充を図ることとし、特に各省庁試験研究費の一括計上に当たっては総合研究プロジェクトを重点的に推進する。また、公害に関する中核的かつ総合的な試験研究機関としての国立公害研究所についてその機能の拡充強化を図る。更に、水俣病の医学的調査及び研究を図るための国立水俣病研究センターの機能を整備する。
(6) 公害被害者保護対策の充実
公害による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、公害健康被害補償制度の一層の充実を図る。
また、原因者不明の油濁による被害漁業者等の救済対策を講じる。
(7) 自然保護対策の推進
自然環境の適正な保全を総合的に推進するため、自然公園等の施設整備の推進、自然環境保全基礎調査の実施、自然環境保全地域等の指定及び国立公園等における民有地の買上げの促進、野外レクリエーション施設の拡充等を図るとともに、都市を中心として緑の空間を確保するため、都市公園の拡充及び緑地事業の推進を図る。
また、海岸、港湾における環境の保全整備を推進する。更に、鳥獣保護対策を一層推進する。
(8) その他
以上のほかに、大気汚染地域等における公立小中学校の児童生徒の特別健康増進事業、省資源・再資源化政策等を推進する。