3 研究活動
国立公害研究所における研究活動は、大型実験施設の整備及び研究者の増員により、また、所外の研究者の協力のもとに年毎に活発化してきている。研究内容は、社会ニーズに対応した目的指向型の研究に重点を置いているが、一方環境研究分野は複雑な要因がからみ合った困難な問題を抱えており、いまだその研究の基礎が確立されていないものが多いため、基礎的な研究分野をも重視して進めている。
53年度における特別研究としては、?植物トロン及び実験圃場を利用して、「陸上植物による大気汚染環境の評価と改善に関する研究」(大気汚染ガス(SO2、NO2等)の植物に与える影響、自然環境の評価のための植物指標、植物による環境浄化機構等を解明するための研究)、?光化学スモッグチャンバーを利用して、「スモッグチャンバーによる炭化水素―窒素酸化物系化学反応の研究」(光化学スモッグの反応生成物、反応機構等を解明するための研究)?動物トロンを利用して、「大気汚染物質の単一及び複合汚染の生体に対する影響に関する実験的研究」(大気汚染ガス(SO2、NO2、O3等)、の生体に与える生理学的、病理学的、生化学的影響を解明するための研究)、?アクアトロンを利用して、「陸水域の富栄養化に関する総合研究」(藻類の異常増殖による湖沼の富栄養化現象を解明するための研究)の4課題を52年度に引き続き実施するとともに、新たに、?土壌トロンを利用して、「有機廃棄物、合成有機化合物、重金属等の土壌生態系に及ぼす影響と浄化に関する研究」(汚泥、汚泥凝集剤、農薬等の植物や土壌微生物、あるいは土壌の物理的化学的性質に与える影響、土壌環境中における分解、浄化機構、分解物の地下水への移行等を解明するための研究)、?大気拡散風洞を利用して、「臨海地域の気象特性と大気拡散現象の研究」(臨海地域の代表的地形における大気汚染物質の拡散現象を解明するための研究)の2課題に着手した。なお、これらの特別研究を進めるに当たっては、大学等所外の研究者との連携を蜜にして実施している。
更に、経常研究としては、環境悪化が人の健康及び生活環境に与える影響、環境汚染現象、機構の解明、環境汚染の計測技術方法の開発、環境に関する知見を活用した総合分析等について、継続及び新規の課題を含めおよそ100課題について実施した。
このほか、環境情報システムについては、大気汚染及び水質汚濁に関するデータベースの整備を進めるほか、国連環境計画(UNEP)の国際情報源照会制度(IRS、54年1月よりINFORTERRAと呼称変更)についても、更に情報源の登録を拡大するなどの所要の作業を進めた。