1 カドミウム汚染に係る健康調査研究
(1) 健康調査
カドミウムは、前節154/sb2.6.1>の4で述べた「イタイイタイ病」の原因の一つであるといわれている。
このため、健康被害発生の未然防止の見地から、カドミウム環境汚染の要観察地域として、宮城県鉛川・二迫川流域等全国7地域を指定し、地域住民の健康調査を実施している。また、要観察地域以外のカドミウム汚染地域においても同様の健康調査を実施している(第6-2-1表)。
これらの住民健康調査を通じ、富山県神通川流域を除いてイタイイタイ病患者は発見されていない。しかし、カドミウム汚染地域においては、低分子量蛋白陽性率が他の地区に比べて高いことが報告されており、これらの症状とカドミウムとの間の関連性について調査研究が進められている。
(2) イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する研究
昭和51年12月に発表された「カドミウムの人体影響に関する文献学的研究」においても指摘されているとおり、イタイイタイ病の原因及びカドミウムの人体影響については、なお未解明な事項もある。
このため、イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒に関する総合的研究を促進するため、従来からの「研究総括委員会」「カドミウムの慢性影響に関する実験的研究班」「腎尿細管障害に関する臨床医学的研究班」「イタイイタイ病に関する研究班」に加えて「病理に関する研究班」を新たに発足された。これらの研究班のうち従来の研究班においては、サル及びラットを用いて、栄養要因あるいは他の重金属を加味したカドミウムの微量長期投与実験、カドミウム汚染地域住民及びカドミウム作業労働者の血液、尿の比較分析等を通じての腎尿細管機能異常に関する研究、カドミウム汚染地域住民の死因等に関する疫学調査等各種の調査研究を行ってきた。なお、53年度に始まった病理に関する研究班においては、カドミウム環境汚染地域住民の病理学的研究を推進することとしており、53年度はそのための体制整備を行ってきた。