1 自然環境保全基礎調査の実施
自然環境保全基礎調査は、我が国の自然環境の状況を、総合的、科学的には握するため、「自然環境保全法」第5条に基づいておおむね5年ごとに実施されるもので、一般に「緑の国勢調査」と呼ばれている。
第1回調査は、昭和48年度に実施され、50年度に公表されている。
この調査の第2回調査は、51年度より学識経験者で構成される検討会において検討されてきた調査方法等の結果に基づき、52年度に策定された調査要綱により、53年度に次の調査項目について、4億円601万円で実施する。
(1) 特定植物群落調査
我が国における植物群落のうちで、原生林、湿原、高山植物などの植物群落、社寺林、武蔵野の雑木林など郷土景観を代表する植物群落で典型的なものなど、学術上重要なもの、保護を必要とするものなどの生育地及び生育状況について調査する。
(2) 動物分布調査
我が国に生息する動物の生息状況をは握するため、動物の分布域について調査する。
ア 哺乳類
シカ、クマ、ヒグマ、イノシシ、ニホンザル、キツネ、タヌキ、アナグマの8種の大型・中型哺乳類について、聞き込み調査を実施し、推定される生息域をは握し、生息分布図を作成する。
イ 鳥類
我が国で繁殖する鳥類について、観察等の現地調査、聞き込み調査などにより繁殖状況をは握し、繁殖分布図を作成する。
ウ 両生類・は虫類
絶滅のおそれのある種、学術上重要な種、産卵場所の保護を必要とする種等の観点から選定したオオサンショウウオ、モリアオガエル、イボイモリ、タワヤモリ、アカウミガメ、エラブウミヘビ等計34種の両生類・は虫類について、生息域をは握する。
エ 淡水魚類
絶滅のおそれのある種、学術上重要な種等の観点から選定したミヤコタナゴ、イタセンパラ等のタナゴ類、イトヨ、ハリヨ、トミヨ等のトゲウオ類、イトウ等計27種の淡水魚類の生息域をは握する。
オ 昆虫類
絶滅のおそれのある種、学術上重要な種を選定し、その生息域をは握すると共に、ゲンジボタル、ギフチョウ、オオムラサキ、ハルゼミ、タガメ等10種の指標的昆虫の分布状況を調査する。
(3) 海岸調査
海岸汀線の砂浜、岩礁、崖等の自然形態及び護岸等による改変状況、ごみ等による汚染状況等をは握するとともに、海岸陸域の土地利用状況についても調査する。
(4) 干潟・藻場・サンゴ礁分布調査
分布の位置、面積、ごみ、土砂堆積等による汚染の概要等をは握するとともに、消滅状況についても調査する。
(5) 海域環境調査
生物の生息状況から見た、我が国の沿岸域の現状をは握するため、プランクトン、底生生物、付着生物等について調査する。
(6) 海域生物調査
我が国の海岸域における生物の生息状況及び生息環境をは握するため、潮上帯(飛沫帯)及び潮間帯に生息する生物を調査する。
なお、植生、河川、湖沼、土地、生態の各調査は、54年度に実施される予定である。