3 鉱害防止対策
金属鉱業等においては、鉱害を防止するため、「鉱山保安法」に基づき所要の措置を講じている。しかし、金属鉱業等に係る鉱山の施設には、操業停止後も引き続き鉱害を発生するおそれがあるものが少なくなく、このため使用済みの坑道及び捨石又は鉱さいのたい積場に係る鉱害の発生の防止については、48年度以後「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づき鉱害防止事業の計画的な実施に努めてきており、52年度中には、鉱害防止のため以下の措置を講じた。
また、53年1月の伊豆大島近海の地震に伴い伊豆半島所在の鉱山のたい積場が崩壊し、鉱さいが流出し、河川を汚染する等の事故が発生したが、この事故の原因、環境への影響等については、学識経験者より成る委員会及び関係省庁で調査が行われており、その結果を待って所要の措置を講ずることとなっている。
(1) 鉱害防止義務者が不存在又は無資力の休廃止鉱山に係る鉱害防止のため、休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度が設けられており、地方公共団体が実施する当該防止工事に要する経費の一部を予算の範囲内において補助金として交付することによって地方公共団体の負担を軽減し、工事の促進を図ってきている。
52年度には、鉱害防止工事(たい積場の覆土植栽)43鉱山、危害防止工事(抗口閉そく)124抗口、抗廃水処理8鉱山、維持管理2鉱山についてそれぞれ助成した。
(2) 金属鉱業事業団鉱害部門の拡充
金属鉱業事業団では、従来から?「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づく使用済特定施設(使用を終了した抗道及び捨石又は鉱さいの集積場)に係る鉱害防止事業に必要な資金の融資、債務保証業務、?カドミウム等の重金属による土壌汚染が生じている農用地等について行われる客土事業等の費用のうち、汚染原因者が「公害防止事業費事業者負担法」に基づき負担する資金の融資及び債務保証業務、?鉱業権者等が積み立てる鉱害防止積立金の管理業務、?鉱害防止技術の開発のための調査業務、及び?地方公共団体の実施する鉱害防止事業に対する調査指導及び指導支援業務を実施している。
52年度は、これら鉱害防止業務のうち、指導支援鉱山を10鉱山から12鉱山に増やし、これに伴い金属鉱業事業団の支所の追加設置等機構を拡充した。
(3) 休廃止鉱山鉱害調査
我が国には約6,000の休廃止鉱山が存在すると推定されるが、これら休廃止鉱山の実態をは握すべく、45年度から4か年計画が緊急度の高い休廃止鉱山1,050鉱山について調査を実施した。しかし、調査が進むに従いこれら以外の休廃止鉱山においても鉱害問題が発生し、また、従来予想されなかった鉱山から有害重金属が随伴して生じる事実が明らかになった。このため、従来調査対象の予定にされていない休廃止鉱山すべての実態のは握が必要となり、48年度から地域事情に詳しい地方公共団体にこれら休廃止鉱山の概査を委託した。また同時に、問題のある鉱山については、次年度鉱山保安監督局部で精査を行っており鉱害防止に万全を期している。なお概査は51年度で、精査は52年度で終了した。
(4) 金属鉱業抗廃水対策調査
金属鉱業等の操業に伴って、抗内水、選鉱製錬廃水、たい積場からの浸透水等が排水されるが、そのままでは一般に水質が悪く、抗廃水処理が必要な場合が多い。また、操業を停止した後でも相当長期にわたって抗内水あるいはたい積場浸透水は流出する場合が多く、抗廃水処理を実施しなければならない。更に、抗廃水の処理によって生ずる沈でん物の処理も問題となる。
このような問題を内包する休廃止鉱山の抗廃水鉱害防止対策を確立するため抗内に侵入する地表水及び地下水のしゃ断等に関する鉱害防止技術の調査研究等を行ってきたところであり、52年度は前年度に引き続き休廃止鉱山の抗口密閉に伴う地下水流の変化に関する調査を行った。これは、抗口を密閉して抗内水の流出をしゃ断した場合の地下水流の挙動は、地形、地質、気象等に影響を受け一様でないので、事前に抗口しゃ断による地下水流の挙動を予測する手法を開発するために行ったものである。